研究実績の概要 |
市販のRGECを培養して糸球体血管モデルとし、ラットの腹腔内から採取した白血球と共培養を行った。培養液中にミオグロビンを加え、白血球と血管内皮の変化を継時的に観察した。さらに一定時間後細胞を固定し、白血球については抗DNA抗体、抗エラスターゼ抗体、抗ヒストン抗体を用いてETsを蛍光染色し、RGECについては抗シンデカン抗体、抗ヒアルロナン抗体を用いて蛍光観察を行った。 1)Hemoglobin/Myoglobinによる腎糸球体血管内皮細胞の直接障害効果を検討した。その結果Hgb 4,000μg/mL, Mgb 2,000μg/mLで12時間後には細胞数の減少が確認され、22時間後には顕著な細胞死の誘導が確認された。上記変化は用量依存性であり、Hgb 2,000μg/mL, Mgb 1,000μg/mL以下では軽度であった。一方、 高濃度 (Hgb 10,000μg/mL, Mgb 5,000μg/mL)では6時間後に細胞数が減少し、内皮細胞死が確認された。以上の結果から、Hemoglobin/Myoglobinには直接的な腎糸球体血管内皮細胞障害作用があることが確認された。しかし熱中症による横紋筋融解でみられる血中myoglobin濃度は20μg/mL程度であることから、臨床的にはmyoglobinが直接糸球体障害をきたしているとは考えにくい。 2) Hemoglobin/MyoglobinによるNeutrophil Extracellular Traps誘導能を検討した。その結果、Hgb/Mgbは、それぞれ100μg/mLの濃度で22時間後にNETs放出を誘導することが確認された。 1)Hemoglobin/Myoglobinによる腎障害には糸球体障害以外にも尿細管障害が考えられる。またその際、熱中症では尿中Mgb濃度が1,000程度に上昇することが報告されている。よって2020年の研究では、ヒト培養尿細管細胞を用いてHgb/Mgbの障害効果を確認する。 2)2019年の研究により、Hemoglobin/Myoglobinによる糸球体障害は、白血球のNETs放出を介して生じる可能性が考えられた。
|