研究実績の概要 |
2019年度の培養細胞実験により、hemoglobin, myoglobinによる血管内皮細胞, 尿細管細胞, 白血球への直接障害効果が確認された。すなわちhemoglobin, およびmyoglobinは100~500μg/mLの濃度において時間経過とともに培養細胞の形態変化および細胞死を誘導することが確認されている。2020年度の研究ではこれらの遊離ヘムによる障害を障害細胞より逸脱するlactate dehydorogenase (LD)の測定、および生細胞測定キットcell counting kit(CCK-8)を用いて定量的に確認し、さらに遊離ヘムの生理的スカベンジャーであるhemopexinの効果を検討した。 その結果、hemoglobin 500μg/m, もしくはmyoglobin 100μg/mを添加して培養した血管内皮細胞培養液中のLDは、通常の培養状態で測定した血管内皮細胞(コントロール)のそれよりもそれぞれ、1.33, 1.23倍に増加し、CCK-8については0.79, 0.74に低下がみられた。これに対しhemopexin 500μg/mを加えた場合は、myoglobinに関しては細胞障害の程度が緩和され、LDで10%程度、CCK-8では12%程度の改善効果が認められた。一方、hemoglobinについてはこのような効果は明らかではなかった。 今回の実験により、1)hemoglobin, myoglobinによる培養血管内皮細胞の障害効果の定量測定が可能であった。2)hemopexinによるmyoglobin障害緩和効果が確認された。3)一方、hemopexinによるhemoglobin障害緩和効果は明らかではなかった。hemoglobin, myoglobinの障害性は、ともにFe2+を介して発揮されるものと考えられるが、hemopexinの効果が両者の間で異なる結果となった理由は明らかではない。今回の結果は同様の実験を繰り返して検証する必要があると考える。
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