研究課題/領域番号 |
19K09426
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
阪本 太吾 日本医科大学, 医学部, 助教 (90587073)
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研究分担者 |
横堀 将司 日本医科大学, 医学部, 准教授 (70449271)
佐々木 和馬 獨協医科大学, 医学部, 助教 (30832266)
須田 智 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (00366733)
林田 敬 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20445258)
山田 真吏奈 日本体育大学, 保健医療学部, 准教授 (70508621)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 心停止後症候群 / 低酸素性脳症 / 神経幹細胞 / 神経栄養物質 |
研究実績の概要 |
心停止後症候群(Post Cardiac Arrest Syndrome:PCAS)は自己心拍が再開し循環の再灌流後に起こる各種病態を含み、低酸素性虚血性脳損傷・心停止後心筋不全・全身性虚血 再灌流障害(多臓器不全)を併せ持つ症候群である。PCAS患者の蘇生後脳症治療は従来、体温管理療法(脳低温療法)が中心となってきた。しかし近年、脳低温療法と平温治療ではその有効性に差異が無いとの報告もあり、治療のブレークスルーが喫緊に求められている。 長い脳虚血時間により一次性脳損傷自体が重篤になると、二次性脳損傷を最小限に抑制し得たとしても良好な転帰には繋がらない。一次的脳損傷による脳組織破壊自体を修復すべく、脳障害治療における再生医療の応用が期待されている所以であるが、PCASにおける虚血低酸素脳症に対し再生医療を応用した研究は皆無である。 本研究はラット蘇生後脳症モデルを作成し、神経幹細胞(NSI-566)を移植した後、新規神経栄養物質(NSI-189)をBoost Therapyとしてラットに投与することで生着率向上と神経細胞への迅速な分化誘導が得られるか検討するものである。NSI-566は米国FDAにて認可をうけたヒト胎児由来神経幹細胞である。すでに霊長類脊髄損傷の運動機能回復が実証され、脳卒中および慢性脊髄損傷での臨床治験が開始されている。商業化されつつある細胞種を使用することで、基礎から臨床応用までの橋渡しも短縮される。NSI-189は、神経栄養因子(SCF、BDNF、VEGF、GDNF)をUpregulateする作用をもつ小分子であり、米国ではうつ病の治療薬として臨床治験が開始されている。すでにPhaseⅠで人体への安全性は確認されており、本研究の成果により、頭部外傷診療における新規治療開発がさらに推進される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験プロトコールの確認、動物実験計画書の承認、行動実験トレーニング、免疫染色トレーニングまでは計画通りに進み、心肺停止蘇生後脳症のラットモデル作成に時間を要した。Sprague-Dawley ラット(8-10週齢 雄)を用いて、吸入麻酔下で気管チューブを遮断し呼吸停止させ心肺停止とし、心肺停止確認から3分後、用手的胸部圧迫と人工呼吸を開始すると同時にアドレナリンを投与し心肺蘇生処置(CPR)を開始、心拍再開を平均動脈圧>50 mmHg以上、5分以上継続するものと定義したモデルを作成した。蘇生後脳症作成一週間後、ヒト神経幹細胞NSI-566を両側海馬に0.5mlずつ注入した。神経細胞移植後より1週間毎8週間、神経栄養因子NSI-189 を投与した。 ①コントロール群:蘇生後脳症を作成せず、NSI-566もNSI-189も投与しない。②無移植・無投与群:蘇生後脳症を作成後、NSI-566のHibernate mediaのみを両側海馬に移植、NSI-189の溶解液(生食)のみをプラセボとし投与する。③移植・無投与群:蘇生後脳症を作成後、NSI-566を両側海馬に移植し、NSI-189の溶解液(生食)のみをプラセボとし投与する。④移植・投与群:蘇生後脳症を作成後、NSI-566を両側海馬に移植し、NSI-189溶液を投与する。 いずれのモデル作成も終了し、モデル作成後8週までのRotarod、Y-mazeによる運動機能、空間認知機能について評価した。 今後は組織学的評価を行う予定だが、コロナ禍での実験の制限、異動なども重なり、進捗が送れている。
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今後の研究の推進方策 |
経心室的に4%パラホルムアルデヒドで灌流固定しラットた脳を摘出し、パラフィン包埋ののち切片を作成し、GFPの発光とNeuN, DCX染色を確認することで、移植神経幹細胞NSI-566の成熟神経への分化を確認する。またGFAP染色およびOlig-2染色を併用することで、グリア細胞系への非分化を確認する。Stereology method(StereoInvestigator 7.50.1 software) にて、全スライスGFP+FJBの発光細胞をカウントすることで移植細胞の生着を定量化する。 組織作成を自作から外注へ変更することで、効果的に実験を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の進捗が遅れたため、組織標本の作製、論文作成、発表が次年度にずれ込んだため次年度使用額が生じました。
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