研究課題/領域番号 |
19K09428
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
太田 彦人 科学警察研究所, 法科学第三部, 室長 (40392261)
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研究分担者 |
宮口 一 科学警察研究所, 法科学第三部, 室長 (10370884)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自然毒 / 中毒 / 高感度LC-MS/MS一斉検出 / スペクトルデータベース / 毒草 / 毒キノコ / 毒魚 / カエンタケ |
研究実績の概要 |
初年度である本年度は、当所過去20年間に我が国で中毒例(296件)のあった毒草(属ベースで43種類、厚生労働省調べ)全ての主要自然毒成分合計62種類、毒キノコ(属ベースで68種類、厚生労働省調べ)のうち29種類(麻薬規制キノコ及び毒成分不明キノコを除くキノコ中毒件数1045件のうち973件(93%)を占める)、並びに毒魚(毒の種類別で6種類、厚生労働省調べ(魚の種類が多すぎるため毒の種類で分類))のうち5種類(毒成分不明魚を除く毒魚中毒820件の全て)の主要自然毒成分総計90成分の分析を行う予定であったが、上記に加えカビ毒、中毒が未報告の自然毒、海外の自然毒も合わせ、ほぼ全ての自然毒を網羅する、合計288種類の自然毒を単離、合成もしくは入手し、逆相分離カラム(水溶性のものが先に溶出)及び順相分析カラム(脂溶性のものが先に溶出)による高感度LC-MS/MS一斉検出条件を構築し、どの自然毒が混入していても検出可能とした。さらに現在まで上記自然毒のうち約200種について、複数の衝突エネルギーと保持時間を指標とした自動検出用スペクトルデータベースの構築を完了し、残りについてもスペクトルデータベースを構築中である。また、この過程で、中毒原因となる自然毒が明らかになっており、中毒件数が多いあるいは死亡件数が多いにも関わらず分析法も市販標準品もない毒キノコであるカエンタケ、ツキヨタケ、ニセクロハツについて、中毒原因自然毒の単離及び生体試料、キノコ試料の中毒分析法の新規開発も行い、カエンタケ分析法については現在英文誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当所国内で中毒事例が確認された自然毒90種類のみを分析対象としていたが、実際に中毒が起きても報告されていない自然毒、あるいは海外から持ち込まれた自然毒による中毒も想定して、世界中の自然毒約300種類のほとんどを網羅する分析法の開発に変更したため、国内のみならず国際的に役立つ研究となった。また、上記自然毒約300種類について、高感度LC-MS/MS検出に必要な分析条件を既に構築し、これはExcelファイル1つに収まるため、必要機関に配布することも可能であり、研究終了後には論文化の際にSupplementaryDataとして公開する予定である。また現在構築中のスペクトルデータベースもライブラリ化して最終的には公開予定であり、分析機器メーカーにも提供予定であるため、多くの法中毒分析機関、救命医療機関の役に立つものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まず上記自然毒約300種類について、複数の衝突エネルギーと保持時間を指標とした自動検出用スペクトルデータベースの構築を完了する。これにより、既に構築した検出条件と合わせ、上記自然毒約300種類に自動検出が可能となる。次に、残り約2年で、ヒト生体試料や食品試料について、いわゆるQuEChERS法を改良したユニバーサル抽出法を開発し、自然毒約300種類の抽出率及び検出下限を算出し、自然毒中毒時における救命救急医療のための迅速な中毒原因特定技術としての有効性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス流行で、年度末に予定していた学会出張が全て中止になったため。次年度使用額については、自然毒標準品の購入に充てる予定である。
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