研究課題/領域番号 |
19K09428
|
研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
太田 彦人 科学警察研究所, 法科学第三部, 室長 (40392261)
|
研究分担者 |
宮口 一 科学警察研究所, 法科学第三部, 室長 (10370884)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 自然毒 / 中毒 / 高感度LC-MS/MS一斉検出 / スペクトルデータベース / 毒草 / 毒キノコ / 毒魚 / QuEChERS |
研究実績の概要 |
3年度目となる2021年度は、前年度に引き続き、前年度までに同時一斉分析法が完成している自然毒300種類について、ユニバーサル抽出法開発の予備実験として、含有動植物菌類、極性、分子量等を考慮して、まず代表的なもの80種類ほどを選定し、自然毒類の前処理及び抽出法として、食品分析に一般に用いられるQuEChERS法のスケールダウンに基づくマイクロQuEChERS法をベースとして、詳細な条件として、弱酸性QuEChERS法、弱塩基性QuEChERS法、完全無水QuEChERS法の三種の検討を行った。生体試料として最も検査頻度の高い全血試料を選択肢、マイクロQuEChERS法による自然毒の抽出条件の検討を行ったところ、弱塩基性条件のEU基準法では試料の溶状不良があり、抽出液が分析に適さなかった。弱酸性条件の米FDA基準法は溶状も良好で、抽出効率及びクリーンアップ効率が最も良好であった。次に全化合物の回収率向上を目的として水層をゼロにする全血完全抽出マイクロQuEChERS法の検討を行ったが、溶状不良が改善しにくく、むしろ極性化合物やイオン性化合物ではの回収率が低下する場合があり、通常のFDA基準マイクロQuEChERS法の方が良好であった。ただし、自然毒80点ほどについて全血マイクロQuEChERS法での回収率を測定したところ、一部水溶性成分の回収率が不良であり、全血完全抽出マイクロQuEChERS法の方が良好であった。以上から、より広範囲な化合物を一斉抽出・分析するには、両者の中間的な条件も検討する必要があると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は実際に世界中の全自然毒の収集、超高感度LC-MS/MSを用いた一斉自動検出技術の構築、生体試料等からの全自然毒の一斉抽出を行うためのユニバーサル抽出法の開発の3段階で構成されるが、これらはいずれも、実験室での抽出実験及びLC-MS/MS実機を直接操作しての膨大な分析実験が必須である。しかし2021年度は前年度に引き続き新型コロナの影響で出勤が抑制され、平日のかなりの日数自宅でのテレワーク勤務を余儀なくされ、自宅ではデータ解析やモニタ用イオンの構造解析程度しかできず実験時間が大幅に削減されたため、予定していた各種ユニバーサル抽出法の検討に大きな遅延が生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、コロナで遅延している残りの自然毒200種類余りについても、生体試料への添加検出実験を行う。最も多くの毒を検出できる一斉前処理・抽出・クリーンアップ法を模索する。また通常QuEChERS法と完全無水QuEChERS法の中間的な抽出法及び新たに有機溶剤希釈限外濾過も選択肢に加え、総合的に最も多くの自然毒を抽出・検出できる方法を見いだし、先に開発した高感度一斉同時分析法と合わせた中毒原因特定技術の開発を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究は実際に世界中の全自然毒の収集、超高感度LC-MS/MSを用いた一斉自動検出技術の構築、生体試料等からの全自然毒の一斉抽出を行うためのユニバーサル抽出法の開発の3段階で構成されるが、これらはいずれも、実験室での抽出実験及びLC-MS/MS実機を直接操作しての膨大な分析実験が必須である。しかし2021年度は前年度に引き続き新型コロナの影響で出勤が抑制され、平日のかなりの日数自宅でのテレワーク勤務を余儀なくされ、自宅ではデータ解析やモニタ用イオンの構造解析程度しかできず実験時間が大幅に削減されたため、予定していた各種ユニバーサル抽出法の検討に大きな遅延が生じた。これに伴い、これらの実験に必要であった試薬や消耗品の消費額も当初の予定を下回ったため。
|