くも膜下出血(Subarachnoid Hemorrhage;SAH)は脳卒中における突然死の原因の第1位である。高齢化社会からさらに進展し現在の日本は世界が経験したことのない超高齢化社会を迎えつつある。当然SAHの発症年齢のピークも高齢へシフトしている。 しかし高齢者は根治術を行うことが出来ても多くの既往症、並存症のため術後管理に難渋することがしばしばであり、重篤な神経学的脱落症状を残存させてしま うことになる。 我々はSAH発症後2週間以内に起こりうるSAH最大の予後規定因子である遅発性脳虚血(DCI)の抑制のためにそのメカニズムの解明と治療薬の開発の研究を行っている。 このために高齢者モデルのマウスを用いてSAH直後の脳循環動態と酸素代謝のモニタリングを無侵襲で行える機器を導入した。そしてDCIの最大の原因となっている早期脳損傷に対して我々が注目しているラパマイシン(RAP)を投与し十分な脳保護効果をもたらすか否かを検証する。RAPは哺乳類RAP標的蛋白質(mTOR)の特異的阻害剤で抗菌作用、オートファジー促進作用、抗炎症作用、免疫抑制作用など多面的な効果を持つとされる薬剤である。 また最近のEBIに関する研究ではmTOR経路とJAK/STAT3経路とERK1/2経路の間にcross talkが存在し何等か保護的に作用をしている可能性をin vitoroの実験で報告されており、これらの交差経路を明らかにすることでさらに脳神経保護作用の機序を解明、発展させin vivoの実験で検証、証明したいと考えている。
|