研究実績の概要 |
DICの本態は、著しい凝固活性化と微小血栓多発であり、進行すると不可逆的な臓器障害や出血症状をきたす。DICモデルを用いた我々の検討では、充分な抗凝固療法を行っても、特に炎症の強い病態では微小循環障害や内皮障害に起因する臓器障害を伴うDICの進展は不可逆的であり、凝固活性化以外の要素が病態に深く関与していると考えられる。血管作動性物質は、DICの循環動態に影響を与える可能性が高いが、その意義を一部解明した(In Vivo, 2021)。これまでの検討から、LPS誘発DICモデルと組織因子誘発DICモデルでは、多くの相違点を有している。DICモデルでの検討を行う際には、DICモデルの病型を意識した検討が必須である。これまでDICモデルにおける出血症状の定量的な評価は困難であったがこの方法を確立した(Int J Hematol, 2021)。これに伴い薬物介入の影響も、より科学的に検討することが可能になった。 線溶抑制型DICモデルに対してtPAを投与して病態への影響を検討した。tPAは、投与量や投与時間の調整を行えば、有効かつ安全な治療方法になることを明らかにした。具体的には、凝固線溶関連マーカーや臓器障害の有意な改善のみならず、炎症性サイトカインへの抑制効果も観察された(Thromb Res,2021)。 大動脈瘤や血管奇形に線溶亢進型DICを合併すると、時に致命的な出血症状をきたすことがある。外来管理には困難を伴うことが多かったが、我々の考案した方法で有効かつ安全にコントロールできることを英文発表した(Int J Mol Sci, 2022. Ann Vasc Dis, 2021)。 LPS誘発DICモデルに対してエリスロポエチンを投与することで肝障害を軽減することを明らかにした(Biomed Rep, 2022)。
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