研究課題/領域番号 |
19K09431
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
今村 浩 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (60283264)
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研究分担者 |
新田 憲市 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (00381228)
望月 勝徳 信州大学, 学術研究院医学系, 講師 (40467163)
嘉嶋 勇一郎 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (70545722)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メディカルコントロール / 救急災害医療情報システム / 病院前救急 / 画像伝送 / 心電図伝送 / 救急医療 / 救命救急センター / 情報技術 |
研究実績の概要 |
本研究では、まず、救急現場の画像や音声の情報を救急救命士がリアルタイムでオンラインMC医師に伝えるとともに、救急救命士とオンラインMC医師の間で双方向性コミュニケーションを行って特定行為など医行為の質を向上させるシステム(ビジュアルオンラインMCシステム)開発を行う。その後、このシステムが、実際の救急医療の場において効果を発揮するか否か検討することを目的としている。 2019年度に、(株)エプソンからヘッドマウントディスプレイ実機を借り受け、救急現場や救急車内での使用についての問題点を抽出する作業を行った。また、松本広域圏救急・災害医療協議会メディカルコントロール委員会に指導的立場で深く関わっていることから、松本広域消防局および松本広域連合(松本市を含む3市5村からなる連合体、人口約42万人)との間でビジュアルオンラインMCの計画を共有した。さらに(株)国際航業と研究契約を結び、同社とエプソン、大学との間で技術的問題について協議を行った。 2020年度、2021年度は長野県の災害・救急医療情報システムを利用するための検討を行うとともに、ヘッドマウントディスプレイを使った現場救急隊との画像伝送とそれを用いたメディカルコントロールの実証実験を行った。 メディカルコントロールは救急隊員による病院前救護の高度化に終わるだけでなく、現在では地域の救急医療の質を向上させる役割を求められており、今後さらにその重要性が増し、体制の強化が図られてゆくことが予想される。救急医療に関わる新たなシステムを地域に広く導入するにはメディカルコントロール体制を利用することはきわめて効率が良いと考えられる。ビジュアルオンラインMCシステムは各都道府県に既に導入されている救急医療情報システムと連携することにより、さらに汎用性のあるシステムとして、社会に大きなインパクトを与えることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特筆すべきことは、本研究の取り組みが、2021年3月に内閣府が主催する「第3回日本オープンイノベーション大賞」厚生労働大臣賞を受賞したことである。長野県の災害・救急医療情報システムである「ながの医療情報ネット」の開発会社(国際航業)と新たに研究契約を結んだことにより同社の協力が得られ、「ながの情報ネット」の、本研究向けのβ版が完成した。本研究は、本県に既に導入されている「ながの医療情報ネット」を用いた研究であることから、県医療福祉部の協力が今後得られる可能性がある。また、松本広域消防局および松本広域連合との間(連合長と当病院長間)も、実証実験の正式な契約が取り交わされており、地域の協力も得られる体制が整った。 一方、実証実験は、COVID-19感染症の蔓延により、救急隊員が多くの出動事案でゴーグル着用することとなり、ヘッドマウントディスプレイ装着に支障をきたすようになった。このため、エアロゾル発生手技以外の症例を中心としてオンラインメディカルコントロールに活用するように変更した。また研究が救急隊の現場活動に支障をきたしては本末転倒のため、極力影響の少ない時期と事案を選択したため、症例の集積に時間を要し、2021年6月まで実証実験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
実証実験の結果を集計し、ビジュアルオンラインメディカルコントロールシステムを利用した症例の事後検証により、このシステムには様々な改良によって、救急隊とオンラインメディカルコントロール医師にとってさらに有用性の高いものになることが判明した。また、COVID-19を契機に、現場救急隊の感染対策が再認識された。これらを元に、本システムのさらなる改良を進める予定である。 また、現時点での結果をもとに学会発表を予定している。最終的に災害・救急医療情報システムへの応用を目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」で述べたように、コロナ禍により、現場救急隊活動の制限のため実証実験の試行が遅れたため、データ収集に遅延が生じ、解析が翌年度にずれ込んだこと。また、学会が軒並みオンライン開催となって出張旅費が不要になったことにより次年度使用額が生じた。 2022年度には研究成果の学会発表や論文化のための費用に使用する予定である。
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