研究課題/領域番号 |
19K09433
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
中橋 奨 三重大学, 医学部附属病院, 技術補佐員 (40761896)
|
研究分担者 |
志馬 伸朗 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (00260795)
高橋 理 聖路加国際大学, 専門職大学院公衆衛生学研究科(公衆衛生大学院), 教授 (60505030) [辞退]
今井 寛 三重大学, 医学部附属病院, 教授 (00184804)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 人工呼吸器関連事象 / 人工呼吸器関連肺炎 / 医療の質 / 医療の質指標 / 集中治療 / 呼吸管理 |
研究実績の概要 |
現在迄(2022年3月末日迄)にICUに入室し、人工呼吸器が3日以上装着(12歳以上)された患者を本研究に組み入れた。経過中にPEEP3cmH2O以上あるいはFIO20.2以上の上昇を伴う急性の酸素化悪化を来した患者をVAEとした。17施設で958名の患者を登録し情報を収集した。その内、全項目の収集が完了した294名について、本実績報告を行う。分析の概要は次の通りである。:(a)VAE発生の有無による患者背景比較(t検定・χ2検定)、(b)病院死亡に対するVAE有無の影響の調査(ロジスティク回帰モデル;説明変数は、入室時SOFAスコア、年齢、性別、VAE発生の有無)、(c)VAEがSOFAスコアに及ぼす影響の調査(VAE発生直前(3~1日前)と直後(発生日~翌々日)の平均スコアを対応ありt検定にて比較)、(d) VAE発生時に新たに行われた臨床行為の把握(レセプト情報より抽出)。結果の概要は以下の通りである。:(a)VAE発生は、31名(10.5%)だった。発生患者では人工呼吸期間が長く(6 vs.17日, P<0.001)、死亡率(18 vs. 65%, P<0.001)が高かった。レセプト情報による入院後発症肺炎は47名であるが、そのうちPVAP基準を満たしたのは6名のみであった。(b)VAEの死亡に対する影響は、調整オッズ比8.7(95%CI:3.67-21.0, P<0.0001)だった。(c)SOFAスコアはVAE発生後に有意に高かった(11.46 vs. 13.93, P=0.003)。(d)VAE発生時に新たになされた臨床行為は、培養検査、CT撮影、抗菌薬投与などが主であった。まとめると、VAE発生は不良な予後と関連しているが、より堅牢な統計的因果推論が必用である。
本課題のプラットフォームとなる日本呼吸療法医学会の学術大会において、2020年度・2021年度と実施状況報告を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究領域はICU患者を対象としたものである。研究期間と一致して生じたコロナ禍によって、患者登録業務に直接的に大きな支障が生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナ禍にて重大な支障が生じたものの、現在、登録患者数は1000名近くを到達できた。今後さらに患者登録・情報集積を進め、本年度前半にはデータベースの確定作業を完了する予定である。年度後半は本解析を進める算段でいる。これの準備として、統計家との入念な打ち合わせを重ねていく。具体的には、VAEと患者予後との関連の分析について、堅牢な統計学医的因果推論が必要であり、これの技術的課題の洗い出しと解決策を導出する。構造解析と時間依存共変量の設定する方向で考えている。
2022年度日本呼吸療法医学会学術集会(8月:横浜市)において、中間報告を行う計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍にて研究の進捗・実施が一時期、著しく滞った為、この間本来使用予定の資金は運用される事無く次年度に繰り越しする事となった。本年度にベジアン解析・機械学習など高度な統計解析に係るソフトウェアの購入に使用する予定である。
|