研究課題/領域番号 |
19K09442
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
宮本 和幸 昭和大学, 医学部, 講師 (80555087)
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研究分担者 |
大滝 博和 昭和大学, 医学部, 准教授 (20349062)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 熱中症 / 凝固因子 / Xa阻害薬 / 直接トロンビン阻害薬 / ICR / C57BL6 |
研究実績の概要 |
心房細動や血栓症では抗凝固療法をおこなうことは広く知られている。日本では急速な高齢化にともない抗凝固療法をおこなう症例は急速に増加している。抗凝固療法は以前からワルファリンが一般的であったが、近年直接経口抗凝固療法が急速に広がっている。凝固因子は生体内において血液を凝固させる以外に、感染・侵襲において重要な役割を果たしている。熱中症では暑熱暴露により過剰な血栓が形成され、播種性血管内凝固症候群(DIC)から多臓器不全にいたることが報告されている。しかし、抗凝固療法を継続しておこなっている人が暑熱暴露から熱中症になった場合生体内にどのような影響がおきるかについては全く知られていない。本研究では熱中症における凝固因子の関連について検討をおこなった。 予備実験として、マウス(C57BL)にダビガトラン(直接抗トロンビン薬)を腹腔内投与し凝固異常をおこした動物を暑熱環境に暴露させたところ、対照群として臓器傷害が著明に出現することがわかった。 本年度は、日本で広く用いられているエドキサバン(Xa阻害薬)を用いて検討をおこなった。C57BL6マウスでは血液採取量が1-1.5mlと極めて少ない。さらにマウス熱中症モデルでは深刻な脱水状態となりさらに採血量の確保が困難である。このため、動物種をC57BL6からICRに変更した。それに伴い、暑熱暴露条件を再度検討し、結果40℃60分に変更した。まず、Xa阻害薬自体がICRマウスの臓器傷害をひきおこさないかについて検討をおこなった。エドキサバン30mg/kgを経口で3日間投与したところ、PT%が優位に対照群と比較して低下するものの、血液生化学検査・病理組織学的検査では有意な臓器傷害はきたさないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2010年からC57BLを用いたマウス熱中症モデルの研究をおこなってきた。これまでの実験では血液生化学検査・病理組織学的検査・検体を用いたELISA, PCRを中心に研究をおこない結果をえてきた。本研究では、凝固能測定や血中の凝固因子の測定に必要な血液量が多い。C57BLマウスでは熱中症後に脱水状態になった場合は十分な血液量が採取できず多くの動物が必要となることが考えられた。このため、動物種をC57Blからやや大型のICRに変更をおこなった。動物種の変更にともない、同じ暑熱暴露条件ではICRマウスの死亡率高く実験の継続が困難であったため改めて暑熱暴露条件の検討をおこなった。これに伴いやや遅れている。 また、2月以降はは救急におけるCOVID-19の対応で臨床が多忙になったことに加えて、自粛から研究室への入室管理が厳格になったこともあり例年に比べてペースが落ちている。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の状況が落ち着き次第、新しい条件で暑熱暴露をおこない血中の凝固因子の変動について検討をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画段階と動物種をC57Bl6からICRに変更したため、凝固能測定のELISA kitの購入やk凝固能測定機器の購入が次年度になった。また、COVID-19対応のため実験室の出入りが厳格化され、臨床におけるCOVID-19症例の治療への対応により実験可能な時間が大幅に減少した。
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