研究課題/領域番号 |
19K09442
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
宮本 和幸 昭和大学, 医学部, 准教授 (80555087)
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研究分担者 |
大滝 博和 昭和大学, 医学部, 准教授 (20349062)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 熱中症 / マクロファージ / 脱髄 / Prukinje細胞 / 小脳失調 |
研究実績の概要 |
熱中症では中枢神経傷害による意識障害が必発である。熱中症と敗血症では病態が類似し、敗血症でも発熱にともない意識障害がおこることが報告されている。2017年にPrillerらはその機序とし、感染では中枢神経に浸潤したマクロファージからTNF-αが放出され、神経炎症を引き起こしシナプス傷害をきたすことが報告されている。しかし、熱中症にともなう神経傷害は小脳障害が報告されているがその機序についてはよくわかっていない。 2021年度熱中症後の小脳傷害についてマウス熱中症モデルを用いて検討をおこなった。マウスに暑熱暴露をおこない、熱中症1, 3, 7,9週に暑熱暴露あり・なし(対照)群でRota rodをおこない協調運動障害について比較した。結果、熱中症群では暑熱暴露から1週目から協調運動障害が出現し、3週目で対照群と有意差がでた。その後、協調運動障害は時間の経過とともに改善した。 これらの機序として、熱中症後1,3, 9週で、対照群と組織学的な比較をおこなった。KB染色をおこない、熱中症群、対照群で脱髄の評価をおこなった。また、Calbindinの免疫染色をおこない、小脳のPrukinje細胞について比較検討した。 結果、熱中症群では1,3週で対照群と比較して優位に脱髄がみられた。9週目では脱髄は改善しあきらかな有意差はなかった。一方、Prukinje細胞については熱中症群で有意に減少していた。熱中症後1, 3,9週で有意に低下を認め、時間経過をへても改善はなかった。上記から熱中症後の小脳失調はPrukinje細胞の減少と脱髄が関与している可能性が示唆された。また、脱髄の改善にともない小脳失調が改善している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は医療機関はCOVID-19の診療に多くの時間を要した。予定以上に研究者進展しなかったものの、おおむね順調に進展している。また、熱中症モデル作成についての学術論文も作成がおわり、アクセプトされ掲載待ちである。 熱中症3度(最重症の熱中症)では意識障害は必発である。2020年度は、暑熱暴露により中枢神経がどのような影響をうけるかについて検討をおこなった。結果、暑熱暴露によりもっとも影響を受けやすい小脳では脱髄・Prukinje細胞の減少がおきること、脱髄が時間経過とともに再髄鞘化し、再髄鞘化にともない運動障害も改善することを発見した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、暑熱暴露によりもっとも熱に脆弱である小脳で障害がうけることがわかった。2021年度は、シナプスに注目し、熱中症によるシナプス障害について免疫染色を用いてシナプス前・シナプス後について検討をおこなう。また、これらの傷害には神経炎症が関与していることが考えられる。このため、熱中症群・対照群で小脳の炎症性サイトカイン・抗炎症性サイトカインをELISAを用いて測定し検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はCOVID-19の感染拡大にともない、診療に多くの時間をとられた。しかし、時間をみつけて研究を継続し、研究は概ね計画通りにすすんでいる。COVID-19にともない各学会が複数中止・Online開催になったため旅費は不要となった。また、論文の作成をすすめた結果、論文の英文校正費用が必要となったため、その他の項目で使用が予算をうわまわった。最終的に、11450円を次年度に繰り越すこととなった。
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