研究成果の概要 |
熱中症後の遅発性小脳失調の病態はよくわかっていない. マウスを熱中症群(HS), 対照群(Ct)にわけRotarodをおこなった. また, 小脳のKB染色による脱髄, Purkinje (PJ)細胞数定量, PSD-95, Synaptophysin(Syn)抗体を用いたシナプス傷害を検討した. HSでは3週後に協調運動障害が出現した. 脱髄はHSで1,3週後に有意に同定され, 9週で改善した. HSのPJ細胞数は1, 3,9週で有意に低下した. PJ細胞周囲のPSD95, Syn発現は熱中症後3週間で最も低下した. PJ細胞減少, 一時的な脱髄・シナプス傷害が関連していることが示唆された.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
ヒト熱中症では,集学的治療で急性期を乗り越えても, 数週間後の遅発性の神経傷害から離床が進まないことを経験する. 特に, 高齢者では, 離床の時期にリハビリが進まず, ADLが大幅に低下し, もとの生活に戻れないことを多く経験する. 熱中症後に小脳症状が出現することはよく知られているが, 病態についてはほとんどわかってこなかった. 本研究では, マウス熱中症モデルを用いて, 遅発性神経傷害に小脳のPurkinje細胞の脱落, 脱髄, シナプス傷害がおきていることをはじめて報告した. 今後, 熱中症後の神経炎症を抑える方法を見出すことで, 新たな治療戦略の構築につながると考える.
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