研究課題/領域番号 |
19K09445
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
芝本 利重 金沢医科大学, 医学部, 教授 (90178921)
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研究分担者 |
谷田 守 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (70512309)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アナフィラキシーショック / サーモグラフィー / 低体温 / 二相性 / 深部温度 / 無麻酔ラット / 体表温度 |
研究実績の概要 |
初年度は無麻酔ラットのアナフィラキシー低血圧においてサーモグラフィー(F50,日本アビオニクス社)により測定した体表温度が低下するかを腹腔内に留置した温度センサーNano tag(株式会社アコーズ)により測定した深部温度の変化とともに検討した。さらに、血管拡張剤による低血圧作用も検討した。 雄性ラットを卵白アルブミンの皮下投与で感作し、2週間後に覚醒下で前日に大腿動静脈に留置したカニューレを介して血圧を測定し、抗原の静脈内投与によりアナフィラキシーを惹起した。体表温度(最高値)と深部温度は30秒毎に測定した。さらに、血管拡張剤1) Sodium nitroprusside(SNP; 3 mg/kg)の皮下投与, 2) Nicardipine Hydrochloride(1 mg/kg)の静脈内投与により低血圧を惹起して検討した。 感作ラット(n=7)では抗原投与後8分に体血圧は最低(57±6 mmHg)となり、その後1時間には回復した。体表温度は深部温度よりも1.3±0.5℃低く、抗原投与後、同様に低下し、30分後には抗原投与前よりそれぞれ1.7±0.8℃と 2.1±0.5℃低下し、以後回復傾向を示した。一方、非感作ラット(n=7)では測定値に有意な変化はなかった。SNP投与ラット(n=7)では体血圧は8分後に64±5 mmHgに低下し、体表温度と深部温度は、それぞれ投与前値から1.2±0.7℃と1.1±0.4℃低下した。また、Nicardipine(n=7)投与により体血圧は1分後に66±8 mmHgに低下し、体表温度と深部温度は、それぞれ0.6±0.2℃と0.5±0.1℃低下した。 覚醒ラットのアナフィラキシー低血圧時に体表温度は深部温度とともに低下した。また、血管拡張剤による低血圧時にも体表温度は深部温度とも軽度であるが低下した。アナフィラキシー低血圧時の温度低下には血圧低下が関与する可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、研究課題遂行のための実験系が確立された。すなわち、無麻酔ラットでサーモグラフィによる体表温度測定が可能となった。さらに、深部温度の同時測定も可能となり、血圧を前日に挿入したカテーテルから測定し、アナフィラキシー低血圧時に体表温度と深部温度が低下することを見出している。これをもとに、血圧測定なしの非侵襲的状態でアナフィラキシー時の温度測定は容易と考えられ、順調に実験計画の遂行が予想される。なお、当初、出血性ショックの実験を計画していたが、無麻酔下では定常状態を得るのが困難と判明し、実験を中止した。しかし、この出血性ショックの実験は補助的実験で本研究課題の目的遂行には支障をきたさない。
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今後の研究の推進方策 |
アナフィラキシー時のサイトカインの検討に向けて、現在、アナフィラキシー時の血圧低下および温度低下に関与する化学伝達責任物質の同定を薬理学的に受容体拮抗物質を用いて検討している点が新たな課題である。それ以外は、計画通りに推進していく。なお、副腎皮質ステロイド投与実験を前倒しに行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
体表温度測定機器であるサーモグラフィーの購入に要する金額が当初の予定金額よりも安価であったため。繰越金の使用計画については、現在進行している新たなアナフィラキシー時の低体温を惹起する責任物質の同定実験に費やす計画でいる。さらには当初より予定されている無拘束モデルの確立、サイトカイン探索実験、ステロイドの効果検討実験を計画している。
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