研究課題/領域番号 |
19K09448
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
遠藤 俊毅 東北大学, 大学病院, 講師 (00535370)
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研究分担者 |
新妻 邦泰 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10643330)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Muse細胞 / 脊髄損傷 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多能性幹細胞 Multilineage-differentiating stress enduring cell(以下Muse細胞)を用いた脊髄損傷に対する新しい細胞移植治療法の開発である。Muse細胞は東北大学で発見された多能性幹細胞であり、腫瘍形成能をもたず、安全性が高い。またMuse細胞は、血管内に投与されると傷害部位を認識して遊走し、生着、そして自発的に分化、組織修復と神経機能改善に貢献する特徴を有している。本研究は、ラット脊髄損傷モデルにたいしてヒト骨髄由来Muse細胞を使用してその移植治療効果を確認するはじめての実験である。さらに、多くの移植実験で従来行われてきたように、Muse細胞を脊髄損傷局所に投与するだけでなく、Muse細胞を経静脈投与し、Muse細胞が損傷脊髄内に到達し神経細胞に分化、さらに脊髄損傷後の神経機能回復につながるかどうかを評価する。これまでに脊髄損傷モデルの確立、ヒト骨髄幹細胞の培養と選択により、ヒトMuse細胞移植株を安定して得られるようになっている。これをもちいて、本研究では、脊髄損傷モデルを作成し、脊髄を露出して髄内にMuse細胞を直接投与する局所投与を行い、治療効果を確認している。さらに、脊髄損傷後にMuse細胞を経静脈投与する全く新しい治療方法を確立するための研究も開始している。 本研究おいて、ラットの脊髄神経機能の改善効果を評価し、とくに、静脈投与によるより安全で低侵襲のMuse細胞移植治療法が確立されれば画期的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以下が達成されており、概ね順調さらに当初の計画以上に進展と考える。 1. 本研究課題で使用する脊髄損傷モデルとして想定した、ラットの圧挫損傷モデルを安定して作成することができるようになった。これは、露出した脊髄にIH-impactorを用いて損傷を加えるもので、実際の脊髄損傷患者の病態をもっともよく反映するとされる。損傷後のラットの下肢運動機能は、多くの脊髄損傷実験で使用されているBasso, Beattie and Bresnahan locommotor scale(BBBスコア)を用いて評価し、その評価系が確立した。 2. ヒト間葉系幹細胞を培養し、SSEA-3抗体を使用したFACS (fluorescenece-activated cell sorter)を使用することで、Muse細胞を選択的に分離することが可能となった。脊髄損傷ラットにMuse細胞を投与したのち、脊髄内部におけるヒトMuse細胞はヒトミトコンドリアに対する抗体を用いて同定することが可能である。 3. Muse細胞の脊髄損傷に対する神経機能回復効果を確認するべく、Muse細胞の脊髄髄内への局所投与を行う実験に着手している。脊髄損傷一週間後のラットの脊髄を再度露出し、ヒトMuse細胞30,000個/4ulを投与し、その後、ラット下肢運動機能回復を観察している途中である。これまでのところ、Muse細胞移植による神経機能回復が確認できている。この結果を受け、当初研究2年目に開始予定であった、Muse細胞の静脈投与実験を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
脊髄損傷モデルにたいするMuse細胞の移植実験を、脊髄髄内局所投与、そして静脈投与の2つの方法で並行してすすめていく。いずれの方法でも、Muse細胞移植後の神経機能回復の評価をBehavior analysisにて行う。さらに、今後は組織学的に、Muse細胞の生着率、神経分化能について、検証を行う。さらに、Muse細胞の移植効果を直接確認できるジフテリア毒素を用いた機能喪失試験を行い、ヒトMuse細胞移植による神経機能改善効果を確認する予定である。現在の進捗状況は順調であり、研究の変更や研究を遂行する上での課題は現在該当しない。
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次年度使用額が生じた理由 |
脊髄損傷を施したラットの状態がよく順調に実験をこなすことができ、結果、予定より数匹、少ない動物数で今年度の実験を行うことができた。次年度に繰越、ひきつづき予定の実験計画を進めていく。実験計画に変更はありません。
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