研究課題/領域番号 |
19K09449
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
鈴木 修平 山形大学, 医学部, 助教 (90637175)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / ドラッグリポジショニング / 抗精神病薬 / 薬剤抵抗性 |
研究実績の概要 |
本研究は、腫瘍細胞における神経伝達物質とその受容体を標的とした治療方法についての研究であり、その際にドラッグリポジショニングという既承認薬を中心として検討していく手法を用いている点を特色とし、速やかで経済的負担の少ない臨床応用を意図したものである。これまでの研究期間で、最も悪性度の高い腫瘍の一つであるグリオブラストーマ幹細胞を中心とし、ブレクスピプラゾールという副作用の少ない新規抗精神病薬が代表的抗アポトーシス分子であるサバイビンの減弱を介して薬剤抵抗性を減弱させることなど複数の知見を報告してきた。これまでの成果で所期の結果を得られ、国際学術誌において報告を行ってきた。今年度は、さらに研究を発展させて新規性の高い知見を報告することができた。 まず、内因性物質とその受容体をターゲットとした既承認薬の新たな視点での応用というストラテジーを応用し、広い意味では神経伝達物質受容体であるが、臨床的にはカテコラミンとして捉えられることの多いエピネフリンとα1受容体に着目した。日常臨床で用いられる安価な代表的降圧剤でエピネフリンα1受容体を標的とした薬剤であるドキサゾシンが、腫瘍細胞のオートファジー活性化を介して第三世代EGFR-TKIオシメルチニブへの感受性を与えることができることを明らかにした。ドキサゾシンは安価な既承認薬でがん患者への使用も可能な安全な薬剤であり、スムーズな臨床応用へのポテンシャルを有する知見を報告することができた。また、重要な内因性ホルモン受容体の一つであるグルココルチコイド受容体とその代表的作動薬デキサメタゾンに着目した研究を報告した。制吐剤や、がん症状緩和に用いられるデキサメタゾンがグルココルチコイド受容体を介して、前述のサバイビン減弱を介して抗がん剤感受性を高めることができるという知見であり、本知見も高い臨床応用ポテンシャルを有していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
概ね所期の結果を計画以上に得られており、今年度の研究成果はさらに進展させた発展的なものである。そしてその知見を国際学術誌への出版をすることができた。非常に充実した研究活動を行うことができたと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題において、腫瘍細胞における神経伝達物質受容体を標的とした新規性の高い治療方法について画期的な報告をすることができた。特に今年度においては、これまでの研究をさらに発展させ、様々な内因性物質受容体とその関連薬剤に関する知見を得ることができた。 今後は、現在得られている研究結果で報告がまだ行えていないものを速やかに論文化し、国際学術誌への投稿を目指している(投稿準備中)。また、これまでの知見をさらに発展させ、神経伝達物質が腫瘍細胞内においてどのような役割を担っており、単純な受容体遮断・活性化といったアプローチ方法以外の治療方法の開発を検討したい。また、今年度に得た発展的知見をもとに、グルココルチコイドの腫瘍内での役割についてもさらに研究を深め臨床応用への鍵を探っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の実験が所期に比して順調に遂行されたため。次年度での応用発展的検討に用いる予定である。
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