研究課題/領域番号 |
19K09451
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
岩立 康男 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (70272309)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グリオーマ / 光線力学療法 / 免疫療法 |
研究実績の概要 |
代表的悪性脳腫瘍グリオーマに対する治療では、神経機能を温存しながら根治を目指すために、腫瘍細胞特異性の高い治療戦略が求められる。特に、腫瘍浸潤域の治療には繊細な治療戦略が必要である。この目的に合致する方向性として、我々は以前より、脳腫瘍の免疫学的治療に注目し研究を重ねてきた。光感受性物質であるインドシアニングリーン(ICG) にリン脂質を結合させた新規ナノ粒子を開発し、この粒子が近赤外線照射により崩壊して細胞障害性を示すと同時に、抗腫瘍免疫を誘導することを確認した。治療後ラットから脳を摘出し組織学的に検討したところ、壊死像とアポトーシス細胞の増加が認められ、CD8 T細胞の集積も確認された。明らかなマクロファージの集積は見られなかった。一方で、ウイルス療法は自然免疫を起点とする特異的な抗腫瘍免疫の誘導に有効である。我々は、腫瘍融解型組換えセンダイウイルスベクターを元に、M遺伝子を欠失させてウイルス粒子産生を消失させ、腫瘍細胞特異的に膜融合を起こすFタンパク遺伝子を組み込んだ安全性の高いベクターを開発した。このベクターは、膜融合能により多核体を形成して効率よく細胞死を誘導するとともに、マクロファージの集積も増強され、自然免疫系の活性化が示唆されている。新規ナノ粒子での治療2週間後にラットより脾細胞を採取し、ここに含まれるCD8 killer T cellの腫瘍細胞特異的な殺細胞効果を7AAD/CFSE cell-mediated cytotoxicity assayにより検討したところ、有意な腫瘍細胞特異的抗腫瘍効果を認めた。センダイウイルスベクターの組み合わせは、自然免疫系活性化によってマクロファージの集積も促進し、光免疫療法の更なる効果増強によって、最も問題となる浸潤腫瘍細胞への抗腫瘍効果発現につながると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vivo実験を推進するための、他施設との連携が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
他施設研究者との連携、情報共有をリモートも含め推進して行く。これにより、早期のin vivo実験再開へ繋げていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はin vivo 実験ができなかったため。次年度に再開する予定である。
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