研究課題/領域番号 |
19K09453
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西村 由介 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20447816)
|
研究分担者 |
大岡 史治 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (10725724)
夏目 敦至 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (30362255)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 脊髄損傷 / 神経再生 / Neurod4 / エピゲノム制御 / アフリカツメガエル / ハイブリッドベクター / 上衣細胞 / グリア瘢痕 |
研究実績の概要 |
2019年度は、アフリカツメガエルの幼生期における脊髄損傷後神経再生時に高発現し、内在性神経幹細胞を誘導して神経再生に関わる最も有効な候補遺伝子として、網羅的発現解析(RNA-seq)により、Neurod4を同定した。次いで、リンパ球脈絡炎ウイルスをエンベロープとし、発現系はレトロウイルスであるというハイブリッドベクターにより、脊髄損傷マウスの神経管にNeurod4の遺伝子導入が高率に行うことができることを確認した。2020年度はこの遺伝子導入マウスの運動機能が有意に改善したことを確認した。生体内イメージングで追跡できるようにGreen fluorescent protein (GFP)で遺伝子導入された細胞をラベルし、免疫染色、qPCRによりNeurod4導入群では、ニューロンのマーカーであるNeuN陽性細胞数の増加、ChAT陽性細胞の有意な増加が確認され、上衣細胞から脱分化した神経幹細胞がニューロンに分化していることが確認された。ニューロンがシナプスを形成していることもシナプスマーカーを用いて確認できた。エピゲノム制御により、興奮性運動ニューロンに誘導・分化させることが可能であったと判断された。また、脊髄損傷後に発生するグリア瘢痕は、軸索の再生の物理的障壁となり神経再生を阻害するが、グリア瘢痕を形成するアストロサイトのうち半数以上は上衣細胞に由来するとされ、Neurod4を導入することでGFAP陽性のアストロサイトの数は明らかな減少を認めた。qPCRでもGFAP発現は対照群と比較して有意な減少が確認された。Neurod4の導入は、上衣細胞から脱分化した幹細胞の分化系統を神経細胞へと系譜転換することで、アストロサイトへの分化を潜在的に減少させた可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究計画をほぼ予定通りに遂行できている。 ニューロンのサブタイプを解析(興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、運動ニューロンへの分化)までできており、それぞれのニューロンがシナプスを形成していることもシナプスマーカーを用いて確認できたが、今後は電子顕微鏡を用いてシナプス形成を確認する予定である。現在の結果ではマウスの有意な運動機能改善は得られているが、さらなる改善のため、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害することで、さらに効率的に神経管上衣細胞を興奮性運動ニューロンに誘導・分化させ、軸索伸長とシナプス再構築と機能回復が得られるか検討する。抑制性ニューロンが同時に誘導される場合には、抑制性ニューロンの誘導を抑制し、効率的にChATニューロンに分化・誘導させるために、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤である、トリコスタチンAの投与併用を考慮する。
|
今後の研究の推進方策 |
ニューロンのサブタイプを解析(興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、運動ニューロンへの分化)までできている。当初、抑制性ニューロンへの分化はニューロンの機能回復という点において有効でないと考えていたが、ここまでの結果にて興奮性ニューロンは尾側方向へ進展するのに対して抑制性ニューロンは損傷部位周辺を中心に進展する傾向が判明しており、いずれのニューロンも機能回復において有効であると考えている。それぞれのニューロンがシナプスを形成していることもシナプスマーカーを用いて確認できたが、今後は電子顕微鏡を用いてシナプス形成を確認する予定である。現在の結果ではマウスの有意な運動機能改善は得られているが、さらなる改善のため、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害することで、さらに効率的に神経管上衣細胞を興奮性運動ニューロンに誘導・分化させ、軸索伸長とシナプス再構築と機能回復が得られるか検討する。抑制性ニューロンが同時に誘導される場合には、抑制性ニューロンの誘導を抑制し、効率的にChATニューロンに分化・誘導させるために、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤である、トリコスタチンAの投与併用を考慮する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ニューロンのサブタイプ解析(興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、運動ニューロンへの分化)までできており、それぞれのニューロンがシナプスを形成していることもシナプスマーカーを用いて確認できたが、当初予定していた電子顕微鏡を用いた確認までは行えていないため、差額を用いて行うことが今年度の目標である。また、差額はさらなる運動機能改善のためのヒストン脱アセチル化酵素を阻害することで興奮性運動ニューロンに誘導・分化させる実験に使用していきたい。
|