研究課題/領域番号 |
19K09454
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
深見 忠輝 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (40378451)
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研究分担者 |
野崎 和彦 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (90252452)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グリオーマ幹細胞 / Quiescence |
研究実績の概要 |
グリオーマ治療抵抗性の原因の1つに、グリオーマ幹細胞の存在が知られている。この幹細胞は腫瘍中に少数存在し、未分化な状態でほぼ分裂しないため、細胞分裂の際に細胞死を誘導する標準治療を免れると考えられる。しかしながら、幹細胞の未分化性維持や細胞周期調節の分子機構は明らかではない。本研究は、マウス神経幹細胞の未分化性維持や細胞周期を制御するエピゲノム因子Rnf20のホモログRNF20に注目し、RNF20がヒトグリオーマ幹細胞で存在すること、未分化性維持や細胞周期制御に寄与する分子であることを明らかにするため、本年度実験計画①、②の検証を行った。 ① グリオーマ幹細胞における ヒトRNF20の発現と機能解析 手術摘出試料から樹立した3ラインのグリオーマ細胞株(RI01, RI02, RI03)を未分化維持培養系sphere cultureで培養した後、RT-PCRおよびwestern blotting を行ってRNF20の発現を調べた。その結果、全てのグリオーマ細胞株でRNF20の発現が同定され、同時に幹細胞マーカーSOX2、OCT4、CD133の発現も確認された。またRNF20の発現ベクターを構築し、sphere cultureのグリオーマ細胞にRNF20を過剰発現させたところ、ヒストン2Bのユビキチン化(H2Bub1)が亢進し、グリオーマ細胞の増殖速度とsphere形成能も亢進した。 ② グリオーマ幹細胞におけるRNF20ノックダウンの効果解析 RNF20shRNAを発現するレンチウイルスベクターを2種類構築し、グリオーマ細胞におけるノックダウン効果を検証した。その結果、H2Bub1の減少に加え、グリオーマ細胞の増殖速度とsphere形成能も有意に低下した。 以上のことから、ヒトグリオーマ幹細胞におけるRNF20のQuiecence制御機構解明の基盤的研究成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実験計画①グリオーマ幹細胞における ヒトRNF20の発現と機能解析、②グリオーマ幹細胞におけるRNF20ノックダウンの効果解析を行った。手術摘出試料から樹立した3ラインのグリオーマ細胞株を実験に供することができたことや効果的なノックダウンレンチウイルスベクターが作製できたことにより、以降のヒトグリオーマ幹細胞におけるRNF20の機能解明へスムーズに進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
現状、概ね順調に進んでおり、今後も研究計画に従って進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究計画が順調に進んだことが要因であり、翌年度分として請求した助成金は次年度のマウスを用いたグリオーマ細胞移植実験の拡充のため、特に実験動物費やMR解析費などに充てる計画である。
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