研究課題/領域番号 |
19K09456
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
杉本 香奈 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (00581034)
|
研究分担者 |
原田 和生 大阪大学, 医学系研究科, 特任准教授(常勤) (50397741)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ischemic stroke / brain edema / myokine / IL-1RA / IL-1 alpha / AQP4 |
研究実績の概要 |
死因の第4位である脳血管疾患で多く認められる脳梗塞において、その後に生じる脳浮腫の治療法は未だ確立されていない。我々はこれまでに、活性化マイクログリアから産生されるIL-1 alphaが、アストロサイトにおけるAQP4の発現を上昇させ、その結果、脳浮腫の悪化を導くことを明らかにした。脳梗塞後の運動は有効な治療法だが、その機序は殆ど明らかではない。その運動効果の一つとして骨格筋由来の分泌因子であるmyokineの関与が考えられる。そこで我々はmyokineの一つである内在性IL-1受容体antagonist(IL-1RA)に着目し、脳梗塞後の脳浮腫形成に及ぼす運動の効果を検討した。 雄性Wistarラットを用いて一過性脳虚血(tMCAO)モデルを作成し、血中IL-1RA濃度を測定した。その結果、脳梗塞後、血中IL-1RA濃度が著しく低下することを見出した。脳虚血モデルラットにトレッドミル運動を実施したところ、脳梗塞後に生じる血中IL-1RA濃度の減少が明らかに抑制された。更に、それらのラットでは脳浮腫の軽減や脳梗塞巣におけるAQP4の発現減少も認められた。一方、梗塞巣におけるIL-1RAやIL-1 alpha mRNAの発現量には変動が認められなかった。培養アストロサイトを用いてAQP4の発現に及ぼすIL-1RAの効果を検討した。その結果、IL-1RAはIL-1 alphaによって誘導されるAQP4の発現上昇を有意に抑制することを明らかにした。IL-1RAをtMCAO施術前に側脳室内投与したところ、脳浮腫の減少及び脳梗塞巣におけるAQP4の発現減少が認められた。 以上の結果から、脳梗塞後に実施するトレッドミル運動は、血中IL-1RAの低下を抑制し、その結果、アストロサイトにおけるAQP4の発現量を減少させ、脳浮腫を軽減させる可能性が考えられる。
|