悪性神経膠腫療法時の免疫応答とheterogeneityの関係

2023 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19K09457
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 香川 尚己 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50444542)
• 研究分担者: 坪井 昭博 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教授 (10372608)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 悪性神経膠腫 / 免疫応答 / heterogeneity / 腫瘍幹細胞 / 腫瘍血管正常化

研究実績の概要

我々の研究室では、WT1を中心とする免疫療法を悪性神経膠腫に対して導入し、治療反応性に関する研究や免疫逃避現象に関する研究を行ってきた。腫瘍抵抗性の原因として、腫瘍幹細胞の治療抵抗性とその制御、腫瘍血管正常化による治療効果について研究を進めてきた。また同時に、大規模な遺伝子解析の知見が急速に進み、分子分類による予後予測などが可能となってきている反面、腫瘍細胞の多様性・不均一性が問題となっている。クローン進化やエピゲノム変化などの内的要因に、微小環境や相互作用などの外的要因が加わり、多彩な治療反応性が作り出されると考えられる。また、免疫療法終了後に神経血管抑制薬を投与した症例やその反対の順序での薬剤投与に関して、現時点で免疫応答を予測するデータは存在しない。
神経膠腫のゲノム・エピゲノムを含むheterogeneityと免疫応答の関係性を明らかにするとともに、腫瘍幹細胞や微小環境による腫瘍免疫抑制の解明、免疫療法と新生血管抑制因子を含む分子標的薬との組み合わせやタイミングなどを検討する基礎的な研究を模索することにより、我が国発信の免疫療法を含んだ新たな臨床試験の可能性が広がり、治療成績を改善させる礎となることを期待する。
本研究では、悪性神経膠腫における腫瘍幹細胞の免疫抑制特性を確認し、治療抵抗性を生じる機構を解明し、免疫療法と血管正常化因子（新生血管抑制）の効果を様々な組み合わせで検証する実験を行った。また、腫瘍細胞のゲノム・エピゲノムと免疫応答の関係性、腫瘍のheterogeneityとの関係性を探ることにより、治療反応への影響を解明し、治療抵抗性、免疫逃避現象機構を明らかにした。さらに、より横断的な悪性神経膠腫の診断と新しい分類への試みへの応用も模索した。

研究成果

• [雑誌論文] WT1 Trio Peptide-Based Cancer Vaccine for Rare Cancers Expressing Shared Target WT1. (2023)
  • 著者名/発表者名: Oji Y, Kagawa N, Arita H, Nishida S, Nakata J, Tsuboi A, Morimoto S, Kishima H, Hosen N, Kumanogoh A, Oka Y, Sugiyama H.
  • 雑誌名: Cancers (Basel). 巻: 15(2) ページ: 393
  • DOI: 10.3390/cancers15020393.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Subtyping of Group 3/4 medulloblastoma as a potential prognostic biomarker among patients treated with reduced dose of craniospinal irradiation: a Japanese Pediatric Molecular Neuro-Oncology Group study. (2023)
  • 著者名/発表者名: Fukuoka K, Kurihara J, Shofuda T, Kagawa N, Yamasaki K, Ando R, Ishida J, Kanamori M, Kawamura A, Park YS, Kiyotani C, Akai T, Keino D, Miyairi Y, Sasaki A, Hirato J, Inoue T, Nakazawa A, Koh K, Nishikawa R, Date I, Nagane M, Ichimura K, Kanemura Y.
  • 雑誌名: Acta Neuropathol Commun. 巻: 11(1) ページ: 153
  • DOI: 10.1186/s40478-023-01652-4.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Surgical resection of glioblastoma in basal ganglia and utility of exoscope: Technical case reports. (2023)
  • 著者名/発表者名: Kijima N, Kinoshita M, Kagawa N, Okita Y, Hirayama R, Kishima H.
  • 雑誌名: .Surg Neurol Int. 巻: 14 ページ: 213
  • DOI: 10.25259/SNI_53_2023.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Qualitative MR features to identify non-enhancing tumors within glioblastoma's T2-FLAIR hyperintense lesions. (2023)
  • 著者名/発表者名: Yamamoto S, Okita Y, Arita H, Sanada T, Sakai M, Arisawa A, Kagawa N, Shimosegawa E, Nakanishi K, Kinoshita M, Kishima H.
  • 雑誌名: J Neurooncol. 巻: 165(2) ページ: 251-259
  • DOI: 10.1007/s11060-023-04454-9.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 小児上衣腫の治療と臨床試験. (2023)
  • 著者名/発表者名: 香川尚己
  • 雑誌名: 日本臨牀 巻: 81(suppl 9). ページ: 534-542
• [雑誌論文] 脊髄髄膜瘤胎児手術の外科治療 (2023)
  • 著者名/発表者名: 香川尚己、渡邊美穂、遠藤誠之
  • 雑誌名: 小児外科 巻: 55(1). ページ: 56-62.
• [雑誌論文] 脳腫瘍-WHO脳腫瘍分類2021改訂のポイント Pediatric-type diffuse low-grade gliomas. (2023)
  • 著者名/発表者名: 香川尚己, 貴島晴彦.
  • 雑誌名: Clinical Neuroscience別冊. 巻: 41(4). ページ: 496－500
• [雑誌論文] 小児脳室内腫瘍における神経内視鏡手術. (2023)
  • 著者名/発表者名: 香川尚己
  • 雑誌名: 脳神経外科. 巻: 50(6) ページ: 1340-1352.
• [学会発表] 再発神経膠腫に対する3種混合WT1ペプチドワクチン療法の長期治療成績 (2023)
  • 著者名/発表者名: 香川尚己、尾路祐介、平山龍一、木嶋教行、岡芳弘、杉山治夫、貴島晴彦
  • 学会等名: 第41回日本脳腫瘍学会学術集会
• [学会発表] 小児第4脳室内腫瘍摘出術における 4K3D外視鏡手術の有用性 (2023)
  • 著者名/発表者名: 香川 尚己、平山龍一、木嶋教行、沖田典子、貴島晴彦
  • 学会等名: 第41回日本小児神経外科学会
• [学会発表] Usefullness of 4K3D-exoscopic removal for pediatric fourth ventricular tumors (2023)
  • 著者名/発表者名: Naoki Kagawa, Ryuichi Hirayama, Noriyuki Kijima, Yoshiko Okita, Haruhiko Kishima
  • 学会等名: 4th Congress of Asian-Australasian Society for Pediatric Neurosurgery
  • 国際学会
• [学会発表] 内視鏡下および内視鏡併用脳腫瘍摘出術の安全性と合併症回避 (2023)
  • 著者名/発表者名: 香川 尚己、平山龍一、木嶋教行、黒田秀樹、館哲郎、宇津木玲奈、沖田典子、貴島晴彦
  • 学会等名: 第30回日本神経内視鏡学会
• [学会発表] 軟骨無形成症における大後頭孔狭窄および水頭症の診断と治療 (2023)
  • 著者名/発表者名: 香川尚己
  • 学会等名: 第56回日本小児内分泌学会
  • 招待講演
• [学会発表] 本邦における脊髄髄膜瘤胎児手術導入に向けての現状と方向性 (2023)
  • 著者名/発表者名: 香川尚己、遠藤誠之、渡邊美穂、味村和哉、田附裕子、北畠康司、荒堀仁美、吉田清志、平山龍一、中川智義、貴島晴彦、奥山宏臣、木村正
  • 学会等名: 日本脳神経外科学会第82回学術集会
• [学会発表] 小児脳腫瘍における術中蛍光診断の意義と有用性 (2023)
  • 著者名/発表者名: 香川尚己、木嶋教行、平山龍一、黒田秀樹、館哲郎、 宇津木玲奈、川本有輝、村上皓紀、沖田典子、貴島晴彦
  • 学会等名: 第19回日本脳神経外科光線力学学会
• [学会発表] 再増大時に放射線再照射を行ったびまん性正中神経膠腫の1例 (2023)
  • 著者名/発表者名: 宇津木玲奈、香川尚己、平山龍一、馬戸史子、松尾怜奈、木嶋教行、沖田典子、原純一、貴島晴彦
  • 学会等名: 第40回日本こども病院神経外科医会
• [学会発表] 診断困難であったmedulloblastoma の一例 (2023)
  • 著者名/発表者名: 西本渓佑、香川尚己、宮村能子、平山龍一、木嶋紀行、沖田典子、森井英一、平戸純子、金村米博、市村幸一、貴島晴彦
  • 学会等名: 第2回小児脳腫瘍カンファレンス