研究課題/領域番号 |
19K09458
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
岡 史朗 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (20420531)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Glymphatic pathway / intracranial pressure |
研究実績の概要 |
基礎研究について (方法)雄性C57BL/6マウスを使用しICP正常群と上昇群の2群に分けて研究を行った。ICPの測定および調整のためcisterna magnaをカニュレーションした。glymphatic pathwayのうち、脳脊髄液腔から脳実質への脳脊髄液の取り込みの部分(Influx)を評価するために脳脊髄液内に蛍光色素Alexa Fluor 555-conjugated ovalbumin (OA-555; 45kD, 0.5%m/v)10μlを2μl/minの速度でcisterna magnaに注入した。注入終了後30分待機したのち屠殺し脳を摘出した。摘出した脳は4%パラホルムアルデヒドで24時間固定した後に凍結し、100μmの厚さで切片を作成した。蛍光顕微鏡で観察し蛍光色素が脳実質内に取り込まれた面積を、画像解析ソフト(Image J)を用いて自動計測し、脳実質の総面積に対する蛍光色素取り込み面積の割合を算出した。ICP上昇群はOA-555を注入すると同時にICPを50mmHgに上昇させ、注入終了後もそのまま30分間持続させた。 (結果)蛍光色素が脳実質へ取り込まれた面積の総面積への割合はICP正常群(N=4)で4.8±0.2%であったのに対し、ICP上昇群(N=3)では0.7±0.1%と統計学的有意(P<0.001)にICP上昇群で脳実質への色素の取り込み面積が縮小した。 (結語)ICP上昇はglymphatic pathwayのうちinfluxの障害をきたす可能性が示された。 臨床研究について クモ膜下出血患者のデータを用いて一過性ICP上昇とcortical spreading depolarization発生の関係を調査した結果、時間的な相関関係を発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度に予定していたCSFトレーサーを用いた研究を行い、研究結果も仮説通り、脳圧上昇がglymphatic pathwayの灌流障害に関わることを示せたことから、概ね順調に 進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
上昇させるICP値によって異なる結果が得られるか調査する。また脳脊髄液の排出(efflux)部分への影響について、蛍光色素で標識した低分子量(Texas Red-conjugated dextran, 3kD)トレーサーを脳実質内に注入す ることで、Glymphatic pathwayの機能障害を検討する予定である。大学院生や研究補助員の協力を得て、研究を計画通り推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響で多くの学会がweb形式に変更になったことで出張旅費が当初の計画よりも少なくなったため残高が生じた。令和3年度は研究実施に必要な物品、消耗品等および研究結果の発表のための論文作成費として使用する予定である。
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