今回の研究では経頭蓋直流電気刺激(tDCS)によるニューロモデュレーションがパーキンソン病(PD)のすくみ足を改善させうる可能性について検討する臨床研究を実施した。tDCS装置として一般に市販されている Halo Sport 2(Halo Neuroscience社製)を使用して、すくみ足を訴えるPD患者の歩行に対する補足運動野(SMA)および一次運動野(M1)をターゲットとしたtDCS刺激の効果を検証するための特定臨床研究(jRCTs032200173)を実施した。 2022年12月末までで症例登録を終了した。予定症例の30例には到達しなかったが、最終的に24例の症例を登録し、臨床試験を実施した。そのうち完了症例は22例で、中止症例は2例であった。当該試験に係る疾病等の発生は特に無く、安全性についての問題は無いと思われた。全登録症例の試験終了後に本臨床研究に対するモニタリングならびに監査を実施した。その結果、最終的に有効性解析対象集団は20例で、結果についての解析を行った。 主要評価項目である30秒間歩行距離および副次評価項目の10m自然歩行ならびに360°回転試験の解析ではtDCS刺激による歩行改善効果は認めなかった。一方、Timed Up and Go (TUG) testでは所要時間およびステップ数においてSMA刺激でのみsham刺激に対して有意な改善効果を認めた。30秒間歩行距離や10m自然歩行は直線歩行能力の評価であるのに対して、TUG testでは直線歩行能力に加えて方向転換や起立・着座能力まで含めた、日常生活機能との関連性が高い評価である。この結果より、SMA刺激がすくみ足を呈するパーキンソン病患者において歩行動作における下肢筋力やバランスなどの改善効果をもたらす可能性が示唆された。
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