研究課題/領域番号 |
19K09468
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
大場 茂生 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (80338061)
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研究分担者 |
廣瀬 雄一 藤田医科大学, 医学部, 教授 (60218849)
八幡 直樹 藤田医科大学, 医学部, 助教 (60450607)
秦 龍二 藤田医科大学, 医学部, 教授 (90258153)
常陸 圭介 藤田医科大学, 総合医科学研究所, 助教 (10508469)
平山 明由 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任講師 (00572405)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グリオーマ / IDH変異 / iPS / 網羅的遺伝子解析 / 網羅的代謝解析 |
研究実績の概要 |
神経膠腫は変異型IDHを有するものと有さないものとに大きく二分され、変異型IDHは前者のdriver mutationと認識されている。本研究では1)iPS細胞由来の変異型IDHを有する神経膠腫モデルを作成し、腫瘍発生機序を解明することで、治療法を探索すること。2)変異型IDHの有無による神経膠腫の差異に治療標的を見出すことを目的としている。以下各々の研究実績について述べる。 1) iPS細胞に変異型IDH1を発現するプラスミドを導入したところ、導入した細胞は生存することなく細胞死へむかった。変異型IDH1の過剰発現がiPS細胞の生存を抑制していると考え、変異型IDH1の発現をDoxycyclineの量で調節できるプラスミドを作成して導入し、変異型IDH1を発現し、かつ細胞増殖を維持できる濃度を確定した。また、iPS細胞が問題なくアストロサイトへと分化誘導できるかについて検討した。約4カ月かけてGFAP陽性、s-100陽性のアストロサイトへと分化できることを確認した。これらを2つの種類のiPS細胞において確認した。 2) 不死化アストロサイトに変異型IDHを導入させ腫瘍化させたモデルと、変異型Rasを導入した腫瘍化させたモデルを用いて網羅的遺伝子解析を行い、それぞれの腫瘍化にあたり変化した遺伝子群に関してGO解析を行った。また、これらの細胞を用いて網羅的代謝解析を行い、それぞれの群比較で有意差を認めた代謝経路を同定した。これらの差異を認めた経路に関しての阻害剤を用いて抗腫瘍効果を認めるかの検討を行い、いくつかの標的候補を確認できた。また、2種の細胞間の違いより、変異型IDHがferrochelatase、heme oxygenase-1の活性を亢進させてプロトポルフィリンⅨ濃度を低下させることを発見し、論文報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
iPS細胞に変異型IDHを導入することは容易にできた。しかしながら、薬剤でセレクションした細胞を継代した細胞では変異型IDHを発現していなかった。GFPと変異型IDHを共発現する別のプラスミドを用いて導入し、FACSにてソートしたところやはり継代していくうちに変異型IDHを発現する細胞は消失した。変異型IDHの過剰発現がiPS細胞を細胞死へと誘導することが考えられたためDoxycyclineにより発現量を調節できるプラスミドを作成し、細胞が生存できる発現量を特定できた。変異型IDH発現細胞の形成に時間を要したため、予定よりやや遅れている。 一方、変異型IDHを有する腫瘍と有さない腫瘍との比較に関しては予定通り行われており、治療標的をいくつか候補としてあげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針に関しても研究実績の概要に記載したように2つに分けて述べる。 1)iPS細胞由来変異型IDH1による腫瘍化モデルの作成について 樹立した変異型IDHを発現するiPS細胞にp53を抑制させるプラスミドを導入し、その発現が抑制されているかを確認する。その後、テロメア長維持のためにTelomerase reverse transcriptaseを発現するプラスミドの導入を行う。更には作成した細胞を分化させてアストロサイトの形態を有する腫瘍が作成できるかを検討する。腫瘍化が確認できた場合には、iPSから分化させたアストロサイトをコントロールとして網羅的遺伝子解析、代謝解析を行う。こうした解析により得られた結果をもとに治療の標的を探索する。 2)変異型IDHを有する細胞と有さない細胞を用いた2群の差異に着目した治療法の開発について 不死化アストロサイトに変異型IDHを導入した変異型IDH発現神経膠腫モデルと変異型Rasを導入した変異型IDH非発現神経膠腫モデルとを用いて網羅的遺伝子解析、網羅的代謝解析を行い、そこで得られた2群の差異に関連した治療標的候補をいくつか同定できた。今後は、そうした治療標的候補を阻害した場合の抗腫瘍効果の程度や抗腫瘍効果機構の解明、更には他の薬剤との併剤効果について検討を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
IDH1発現細胞の作成に時間を要したため、予定よりやや遅れている状況である。 残高は今後の研究計画に使用する予定である。
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