研究課題/領域番号 |
19K09469
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研究機関 | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
山下 洋二 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 特任研究員 (30420045)
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研究分担者 |
田沼 延公 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 主任研究員 (40333645)
長南 雅志 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (90813676)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グリオーマ / 代謝 |
研究実績の概要 |
星細胞腫や二次性膠芽腫の~70%が、IDH1/2遺伝子の機能獲得型変異をもつ。変異型IDH特異的な阻害剤も開発され臨床試験が行われているが、早くもIDH遺伝子の再変異による獲得耐性が問題となっている。一方、IDH変異グリオーマは、ある代謝干渉に対し、著しく脆弱という報告がある。本研究では、培養系および前臨床モデルにて、上記代謝脆弱性の検証することを目的に、検討を行った。 U87ヒトグリオーマ細胞株(U87親株)、および同細胞にゲノム編集によって内在性IDH1遺伝子にR132H機能獲得型変異を導入したisogenic細胞株(U87-R132H)を用いて検討を行った。これら細胞をNADサルベージの律速酵素、NAMPTに対する阻害剤FK866存在下で4日間培養し、それぞれの細胞における増殖への影響を調べた。また、上記薬剤処理においてニコチン酸を種々の濃度で添加し、同様に増殖への影響を調べた。qRT-PCR法による遺伝子発現解析も行った。 FK866のLC50値は、U87親株で15 nM程度、U87-R132H細胞にて100 nM程度と算出された。20 nM FK866がU87親株にもたらす増殖抑制を、大過剰のニコチン酸によってもレスキューすることはできなかった。これら結果は、先行研究(Tateishi Kほか、Cancer Cell 2015)にて提唱されたモデルとは、かなりの乖離がある。「IDHの機能獲得変異がNAPRT発現低下を引き起こしてPreiss-Handler経路が不活化され、その結果NADサルベージ阻害に脆弱となる」という既報モデルは、少なくとも、全ての症例・細胞株で当てはまる訳ではないことが強く示唆された。一方、上記細胞セットの遺伝子発現解析からは、予想外の代謝リプログラムを示唆する結果が得られた。さらに、新規NAMPT阻害剤が得られたとともに、NAMPT阻害治療の実効性を高める食事療法開発の端緒となる結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究の冒頭にて先行研究のモデルを再現できなかったことから、計画を修正して研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に見出した、NAPRT発現低下とは関係ない遺伝子発現変化に着目し、IDH変異グリオーマの代謝特性を解明する。U87細胞以外の株での再検討もすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
・消耗品費が当初想定よりも僅かに少なくすんだため ・次年度の消耗品費に上積みし、より迅速な計画進捗をねらう。
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