研究課題
星細胞腫や二次性膠芽腫の~70%が、IDH1/2遺伝子の機能獲得型変異をもつ。変異型IDH特異的な阻害剤も開発され臨床試験が行われているが、早くもIDH遺伝子の再変異による獲得耐性が問題となっている。一方、IDH変異グリオーマは、ある代謝干渉に対し著しく脆弱という報告がある。本研究は、培養系および前臨床モデルにて、上記代謝脆弱性を検証することを含め、IDH変異グリオーマの代謝特性を解明することを目的とする。これまで、U87ヒトグリオーマ細胞株(U87親株)、および同細胞にゲノム編集によって内在性IDH1遺伝子にR132H機能獲得型変異を導入したisogenic細胞株(U87-R132H)を用いて検討を行ってきた。前年度の検討において、予想に反し、IDH1変異細胞の方が、野生型細胞と比べ、NADサルベージ経路の阻害への感受性が低いことが判明していた。その原因を探るため、NAD代謝関連酵素群の遺伝子発現やタンパク質レベルでの発現を検討した。タンパク質レベルで検討すると、先行研究(Cancer Cell ‘15)の結果に一致して、ニコチン酸代謝酵素であるNAPRTの発現が減少していた。一方で、NADサルベージ経路の律速酵素であるNAMPTの発現が著しく上昇していた。また、トリプトファンからのde novo NAD合成に関わる酵素QPRTの発現も大きく上昇していた。これらの結果は、mRNAレベルでの遺伝子発現解析でも確認された。遺伝子発現解析では、さらに、NMNAT2, NMNAT3, NADSYN1といったNAD合成に関わる酵素のmRNA発現も上昇していた。これら一連の遺伝子発現変化が、U87-R132H細胞にNADサルベージ阻害への抵抗性をもたらしていることが示唆された。
4: 遅れている
研究の冒頭にて先行研究のモデルを再現できなかったことから、計画を修正して研究を進めてきた。その後、着実に進展しているものの、当初の遅れを完全に取り戻すには至っていない。
これまでの培養系で得られている結果が、動物実験でも再現されるか否かをマウスモデルにて検討する。
・消耗品費が当初想定よりも僅かに少なくすんだため・次年度の消耗品費に上積みし、より迅速な計画進捗をねらう。
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巻: in press ページ: -
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