研究課題/領域番号 |
19K09470
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
下里 修 千葉県がんセンター(研究所), がん予防センター 腫瘍ゲノム研究室, 室長 (30344063)
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研究分担者 |
井内 俊彦 千葉県がんセンター(研究所), 脳神経外科, 部長 (80370881)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脳腫瘍 / CD133 / 癌幹細胞 |
研究実績の概要 |
悪性脳腫瘍は治療抵抗性の高い予後不良な難治性がんであり、治療抵抗性の本態と想定される「癌幹細胞」を標的とする革新的な治療法の開発が強く望まれている。この課題に対し、申請者は当該細胞が発現する細胞膜蛋白質CD133とPI3K/AKT経路の連携の一端を明らかにしてきたが、その詳細な分子機構には不明な点が残されている。一方、申請者はCD133との相互作用が示唆される新規アダプター蛋白質群を同定し、これらがCD133と共にクラスターを形成し、その下流シグナルを増強する可能性が示唆された。本研究では、3次元培養によって手術検体から樹立した初代脳腫瘍細胞株を用いて、悪性脳腫瘍が治療抵抗性を獲得する分子機構における申請者が独自に提唱する「CD133クラスター」の意義解明を目的とする。 今年度は、CD133あるいはそのアミノ酸置換によって機能増強型あるいは機能損失型の変異CD133を過剰発現する神経膠腫(GBM)由来と膠芽腫由来の細胞株を作製し、その形質変化を解析した。また、新規治療薬開発を目指し、自施設で合成したCD133を標的する新規有機化合物はCD133を発現する様々ながん細胞に対し殺細胞効果を有することが確認できた。一方、米国がんゲノムアトラス(TCGA)に保管されるGBMの生存データを用いて「CD133クラスター」となりうる遺伝子群がGBMの予後に影響を及ぼすことを検討した。その結果、CD133遺伝子およびCD133と相互作用することが予想される遺伝子Xを高発現するGBM患者は、その生存期間が有意に短かかった。反対にCD133の機能を抑制する効果を持つ遺伝子Yを低発現するGBM患者の生存期間は有意に短いことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画にしたがってCD133の機能解析が進んだ。また、CD133発現を抑制する新規化合物の殺細胞効果も確認できたので、今後の進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、新たに細胞外領域で機能を発揮することが予想される領域を見出したので、当該領域を持たない新しい変異体を作製し、その影響(薬剤感受性、造腫瘍能など)を解析する。さらに、合成済みCD133標的PIP化合物が有する抗腫瘍効果を、神経膠芽腫細胞株を同所性あるいは異所性に接種した担癌マウスを使って検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は学術誌へ成果を投稿し、その掲載料の支出を見込んでいた。しかし、その採択が年度末になったため、掲載に係る経費は年度内に使用できなかった。加えて、緊急事態宣言発令により研究活動の自粛が求められただけでなく、当該ウイルス検査への対応として、プラスチック製品の欠品が多く、研究者への供給遅滞が重なり、物品費の使用が予定よりも少なくなった。 次年度に向けた使用計画として、まず、昨年度未使用の論文掲載料として使用する。加えて、今後も継続するであろうウイルス対策の影響を考慮して、計画的なプラスチック製品や試薬の購入を心掛けていく。
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