研究課題/領域番号 |
19K09477
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
江頭 裕介 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 助教 (50547677)
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研究分担者 |
岩間 亨 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20303498)
中山 則之 岐阜大学, 医学部附属病院, 講師 (30444277)
榎本 由貴子 岐阜大学, 医学部附属病院, 講師 (20377659)
船津 奈保子 岐阜大学, 医学部附属病院, その他 (10550296) [辞退]
山田 哲也 岐阜大学, 医学部附属病院, 医員 (60816114)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脂肪組織由来幹細胞分泌因子 / 神経保護療法 / 急性脳神経障害 |
研究実績の概要 |
通常の条件下で、マウスおよびヒト脂肪組織由来幹細胞(Adipose-derived stem cells: ADSCs)を培養し、上清成分を採取した。マウスおよびヒト成熟脂肪細胞を培養し、その上清を用い比較対象とした。これらの上清に対し、抗体アレイを使用しそれぞれに含まれる因子を比較し、ADSCsの培養上清中に高濃度で含まれる因子、および成熟脂肪細胞培養上清と比較し高倍率で見られた因子を確認した。これらの因子はほぼ一定の傾向を示しており、データの再現性も確認できつつある。これらの因子中にはすでに実験的脳卒中に対する神経傷害軽減効果が報告されているものもあれば、これまでの報告では炎症反応の惹起など、むしろ悪影響への関与が示唆されている因子も見られる。成熟脂肪細胞培養上清と比較し特に高倍率で見られたいくつかの因子について、特にこれまでの報告例からは作用が未知であるものを中心に、脳梗塞および出血性脳卒中モデルマウスに対し脳室内投与を行い、脳卒中作成後急性期における神経傷害の軽減効果を検討している。具体的には、脳梗塞モデルマウスにおいては、現在までに虚血-再灌流傷害の軽減が示唆されており、対象部位(脳虚血コアおよび周囲ペナンブラ組織)における神経傷害や、それに関与すると考えられる微小血管傷害、炎症細胞浸潤等の差異について検討中である。また、出血性脳卒中モデルマウスにおいては、出血周囲および白質神経組織に注目し同様の検討を行っている。同時に対象の因子について、in-vitro系においてまずは脳微小血管内皮細胞に対する低酸素傷害モデルにおいての効果を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ADSCsの培養上清に特徴的に見られる因子を成熟脂肪細胞培養上清と比較することで、ADSCs分泌因子をより正確に推定、特定し、さらに複数回の検討を重ねることでほぼ再現性を確認することができている。そのいくつかの因子について、in-vivoでの脳卒中モデルにおける急性神経傷害の軽減作用を検討中の段階にまで到達している。出血性脳卒中モデルに対する神経保護作用についても同様に期待できるが、こちらはより報告例が少なく、新規性の高いデータが得られる可能性がある。In-vitro系においても、脳微小血管に対する傷害保護作用の検討を開始したところである。
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今後の研究の推進方策 |
In-vivo系においては、ADSCsと同様の間葉系幹細胞である骨髄由来幹細胞においては、移植前に低酸素条件下で培養を行うことで実験的脳虚血に対する治療効果が高まるとの報告がある。ADSCsでの培養条件を変化させ(低酸素、飢餓負荷など)、通常条件下でのADSCs培養の際の分泌因子との比較検討を行うことで各因子の作用の程度を検討し、さらに関与する可能性のある細胞内シグナルについて、当初の予定通り検討を進める。同定されたADSCs分泌因子について、とくにこれまでの作用が未知であり、かつ急性神経傷害軽減が期待できるものについて、至適投与経路(脳室内投与、静脈内投与、腹腔内投与)の検討を行う。臨床応用を目指す上では静脈内投与もしくは経口投与、腹腔内投与にて効果が得られることが望ましいため、これらの投与法を中心に評価を行う。さらに、これらの結果についてより詳細なメカニズムを解析、検討するため、in-vitro系も併せて用い、細胞内シグナルの解明を目指す。一方、ADSCs分泌因子中には、急性神経傷害に対する影響が未知であるもの、さらには傷害を促進、悪化させる可能性のある因子も含まれる可能性があるため、このような因子が推定できた場合には悪化のメカニズムやこれらの因子の制御による神経保護作用の可能性の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じているが、ほぼ予定通りであったと考えている。次年度も主に動物、抗体などに関する消耗品を購入する予定である。
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