本研究ではin vitro、in vivo実験を併用して、IDH野生型悪性脳腫瘍の腫瘍形成過程におけるスーパーエンハンサー領域を経時的に解析し、治療標的としての有用性を評価することを目的とした。 ①MADMマウスから回収したGFP陽性細胞を用いたChIP-Seq、RNA-Seq解析:脳腫瘍自然発生モデルであるMADMマウスからFACSセルソーティングにて腫瘍形成前の生後8日、60日のマウスと腫瘍形成後の生後120日のマウスからGFP陽性細胞を回収し、ホルマリン固定した後に抗H3K27ac抗体を用いてクロマチン沈降法(ChIP法)にてその修飾領域を解析した。以前に同定しているH3K27me3領域と比較解析を行った。対照群は同腹仔の正常マウスを用いて同様の解析を行った。またこれらのGFP陽性細胞からRNAを回収し遺伝子発現解析を行った。 ②EZH2阻害剤投与によるスーパーエンハンサー領域変化の解析:これまでに複数のMADM腫瘍細胞株を樹立しており、それらの細胞株を用いて解析を進めた。EZH2阻害剤であるEPZ6438を細胞株に投与6日後に細胞を回収してウエスタンブロッティング法にてH3K27me3修飾が抑制されていることを確認した。これらの解析からFzd8という分子に着目をして解析を進めた。 ③MADM腫瘍細胞、MADMマウスへのEZH2阻害剤による腫瘍増大抑制効果の評価:MADM腫瘍細胞株にEPZ6438を投与し、MRI撮影を行うことで腫瘍の増大が抑えられること、生存期間の延長がえられることを確認し、Ezh2ノックアウトでも同様に腫瘍の増大が抑えられることを確認した。投与後のマウス脳から腫瘍組織を回収し、Ezh2の標的分子であるFzd8の発現が増加していることを確認した。
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