研究課題/領域番号 |
19K09488
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
立石 健祐 横浜市立大学, 医学部, 助教 (00512055)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グリオーマ / IDH1変異 / DNA高変異 |
研究実績の概要 |
神経膠腫(グリオーマ)のアルキル化剤治療後に生じるDNA高変異状態と悪性転化の機序解明を図ること、またDNA高変異状態を呈したグリオーマに対する治療標的の探求を図ることを研究目的に掲げ、独自に樹立した内因性IDH1変異グリオーマ細胞を用いてmismatch repair遺伝子の一つであるMSH6のノックダウンを図った。この細胞とコントロール細胞に対しTMZを長期間にわたり連続投与した。Whole exome sequencing(WES)を用いて変異状態を検討したところ、コントロール細胞と比較してtumor mutational burden が著明に上昇しており、またアルキル化剤投与後に特有の塩基置換パターンが確認されたことからTMZ誘発性にDNA hypermutation phenotype (HM)が発生した可能性が強く示唆された。これらのペア腫瘍細胞モデルはいずれもin vitro培養下で安定して増殖可能となった。これによりDNA高変異状態の及ぼす生物学的特徴を検証可能なIDH1変異グリオーマ細胞株の樹立を世界に先駆けて成功した。その結果、DNA高変異状態への移行プロセスを研究レベルでモニタリング可能となった。これらの細胞に対してドラッグスクリーニングを行い、複数の化合物が候補薬剤として見出されており、現在さらなる解析を進めている。またコントロール細胞とTMZ長期投与後HMを呈した細胞をマウス脳内に定位的に移植し生存分析を行ったが、両群間で予後に有意な差は認められなかった。加えて内因性DNA高変異グリオーマモデル (YMG6R)から細胞株を作成した。経時的に得られた再発検体と細胞株をそれぞれ検討したところ、HMは可逆的な変化を示した。このことからもHM自体がグリオーマの悪性化促進に及ぼす影響は乏しいことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在研究期間内の2年目が終了したが、概ね研究結果は順調に取得できている。次年度以降も同様の手法によりデータ取得を行い論文化につなげる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
High throughput drug screening の結果から複数の治療候補剤が同定された。今後これらの候補薬剤がHMそのものに対する治療標的かを含め更なる検討が必要である。今後本研究を更に進めることでIDH変異グリオーマに対する新たな知見を創出することを目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究計画に変更が生じたため、予想外に少ない研究費執行となった。残高を次年度研究費用に充て研究を促進させる予定である。
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