研究課題/領域番号 |
19K09489
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
中川 一郎 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (20550825)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 虚血耐性現象 / ミトコンドリア / メラトニン |
研究実績の概要 |
我々はメラトニン受容体を介する本現象の機序を解明するために細胞膜やミトコンドリアにおいて、イオンチャンネルの機能をリアルタイムに計測できるパッチクランプ法を用いた電気生理学的な検討を行った。 方法は細胞はC57BLマウスの海馬スライスを作成した。CA1錐体細胞に対してホールセルパッチクランプ法を用いて虚血負荷後のspontaneous EPSC(sEPSC)、evoked EPSCの変化を測定し、7.5分間の虚血負荷後のメラトニンを投与したメラトニン投与群と、コントロール群の間でsEPSCの頻度などについて電気生理学的に計測した。さらに細胞内カルシウム濃度の変化に関してもメラトニン投与の効果について検討を行った。 結果として、虚血負荷によりsEPSCの頻度が増加するのに対し、メラトニン投与群ではコントロール群と比較し、有意にsEPSCの増加は抑制された。NMDA受容体電流はメラトニン投与およびメラトニンagonist 投与によって抑制され、そのメラトニンの効果はmPTP阻害薬のサイクロスポリンA投与によってキャンセルされた。またメラトニン投与群では細胞内カルシウム増加が抑制され、組織学的検証ではメラトニン投与で死細胞数が抑制された。さらにメラトニン及びその作動薬投与によってミトコンドリア膜電位変化は抑制され、この効果はメラトニン拮抗薬によってキャンセルされた。 今回の検証結果では、メラトニン投与群およびPostC群でsEPSCおよびNMDA電流が抑制され、細胞内カルシウム濃度上昇およびミトコンドリア膜電位変化の抑制を認めていることから、虚血負荷後のメラトニンの投与によりPost conditioning現象と同様の神経保護効果をもたらすことが示唆された。今後は細胞内カルシウム濃度変化やミトコンドリア電位変化の作動薬、阻害薬の効果等についてさらに実験を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミトコンドリア膜電位の測定の技術的な問題で進行が遅れていたが調整により何とか解決し、実験はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果からメラトニン投与によってMPTP が一部開放され、ミトコンドリア膜電位が部分的に脱分極することでNMDA受容体のダウンレギュレーションが生じ、これにより細胞外からのカルシウム流入が抑制され、神経保護効果をもたらす機序が考えられた。今後は各メラトニン作動薬、阻害薬による各パラメーターの変化等の実験及び解析を計画書に従って進めていく予定である
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で機器の購入に遅れが生じたため次年度使用額が生じた。計画に沿って機器の購入を行う。
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