研究課題/領域番号 |
19K09498
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
井上 智夫 北里大学, 医学部, 助教 (60791449)
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研究分担者 |
冨永 悌二 東北大学, 大学病院, 教授 (00217548)
藤村 幹 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (00361098)
新妻 邦泰 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10643330)
遠藤 英徳 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (40723458)
臼杵 豊展 上智大学, 理工学部, 准教授 (50514535)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | もやもや病 / エラスチン / desmosine / isodesmosine / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、臨床医学と有機化学の異分野融合型の学際型研究として、動脈壁の構成成分であるエラスチンの架橋アミノ酸desmosineおよびisodesmosineが、もやもや血管の増勢や脳出血、脳梗塞などの致命的となり得る脳血管イベントの発症を推測可能なバイオマーカーであるという作業仮説を検証し、もやもや病の病態評価に関する簡便かつ高精度な診断法を初めて開発することである。 もやもや病患者ではウイリス動脈輪に内膜線維性肥厚、内弾性板の屈曲、中膜の菲薄化などが認められている。その為、動脈壁中膜の主要成分である弾性線維エラスチンが組織学的に破綻している可能性が示唆されるが、生体内での血液生化学的動態には不明な点が多い。したがって、本研究では血液などの臨床試料中のエラスチン架橋アミノ酸の変動をバイオマーカーとする前例のない、簡便かつ客観的で高精度なもやもや病の病期進行予測モデルを構築できる。 もやもや病患者の体内動態に関する以下の3項目につき、計3年間の研究期間内に明らかにする。(i)もやもや病患者の臨床試料中のdesmosine/isodesmosineの定量分析(1年目)(ii)もやもや病患者組織中のdesmosine/isodesmosineの定量分析(2年目)、(iii)抗体作製に基づくELISA法の開発とバイオマーカー診断法の確立(3年目)。東北大学病院脳神経外科を中心にもやもや病患者48例および健常対照者18例に関する臨床データベースを構築した。これをもとに、分担者である上智大学理工学部臼杵研究室で確立した同位体希釈LC-MS/MS法を利用して、血液中のdesmosineおよびisodesmosineの濃度の定量分析を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東北大学病院脳神経外科を中心に関連施設である広南病院や仙台医療センターと連携し、もやもや病患者48例および健常対照者18例に関する臨床データベース (年齢、性別、画像上のもやもや血管に基づく病期分類、家族歴、生活習慣病の有無、喫煙歴、既往歴の有無およびdesmosine、isodesmosineの情報を含んだ試料)を構築した。これをもとに、分担者である上智大学理工学部臼杵研究室で確立した同位体希釈LC-MS/MS法を利用して、血液中のdesmosineおよびisodesmosineの濃度の定量分析を解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、もやもや病患者組織中のdesmosineおよびisodesmosineの定量分析を継続する。次年度はとくに開頭手術を施行した患者から得られる、もやもや病患者の組織の一部を採取する。そして、その試料を前処理した後、LC-MS/MS測定により、desmosineおよびisodesmosineの定量分析を行うことで、もやもや病患者の動脈内のエラスチン存在量を直接的に計測する。この結果、もやもや病にエラスチンが関与していることを証明しうる確信的なエビデンスを得ることができ、独自の成果が期待できる。さらに、最終年度には抗体作製に基づくELISA法の開発とバイオマーカー診断法の確立を目指し、上記で確認されたdesmosine化合物と、KLHやBSAなどのキャリアータンパク質とをリンカーを通して化学合成により複合体を調製し、これを抗原としてマウスへ免疫する。そして、ポリクローナル抗体をそれぞれ作製し、ELISA法を確立することで、臨床試料を高感度に検出できるキットの開発へつなげる。また、臨床・化学データを統合し、これまでに例のないdesmosineのバイオマーカーとした、もやもや病の病期・病態予測に関する診断法を確立したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
税金分で差異が生じたと考えられる。
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