研究課題/領域番号 |
19K09505
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
荒川 芳輝 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (20378649)
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研究分担者 |
Thumkeo Dean 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (40372594)
平田 英周 金沢大学, がん進展制御研究所, 准教授 (40761937)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リプログラミング / 非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍 / INI-1 / エピゲノム異常 / iPS / AT/RT / 転写ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究では、リプログラミング技術を用いて非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍(AT/RT)のエピゲノム異常の解明と新規治療開発を目的とする。AT/RTは、INI-1遺伝子の不活化がドライバーであるが、その他の遺伝子変異は少なく、INI-1不活化からAT/RT発生に至るメカニズムや起源細胞は明らかでない。リプログラミング技術は、がん細胞のゲノム初期化から発がんメカニズムにおけるエピゲノム異常の解析に有用である。本研究では、INI-1不活化に伴うエピゲノム異常がAT/RTの発生メカニズムであるという作業仮説の上に研究を進めた。 樹立したhiPSCs TP53-/-, INI-1-/-細胞をマウス脳内に移植し、腫瘍形成能、発生する腫瘍型について組織学的な解析を行った。分化誘導に伴う腫瘍形成能、腫瘍型の変化について解析した。その結果、腫瘍形成する起源細胞が神経幹細胞よりもさらに未熟な幹細胞であることを同定した。形成した腫瘍細胞の初代培養を行い、hiPSCs TP53-/-, INI-1-/-細胞由来のヒトAT/RT細胞株を樹立した。樹立したヒトAT/RT細胞株のin vitro、in vivoの解析を行い、in vitroで増殖能、浸潤能、細胞運動、神経細胞機能について細胞生物学的に解析を行った。その結果、高悪性度な腫瘍性格を示すことを同定した。hiPSCs TP53-/-, INI-1-/-細胞、神経分化誘導後細胞、細胞脳内移植で発生した腫瘍を用いてトランスクリプトーム解析した。これにより、AT/RT形成に必要となる転写ネットワークが幹細胞に類似した形態に変化していることを同定した。lentiviral CRISPR/Cas9による網羅的な遺伝子阻害スクリーニングを行い、AT/RT腫瘍形成に必須となる分子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
十分な準備を行っていたため、順調に成果を得た。今後の研究の発展性のために新たな取り組みも加えることを検討する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究により、INI-1不活化に伴うエピゲノム異常がAT/RTの発生メカニズムであることが明らかとなった。そこで、今後は、INI-1不活化に伴うエピゲノム変化とAT/RT形成の関与について、樹立したヒトAT/RT細胞株にリプログラミングを行うことでの腫瘍形成能を解析する予定である。さらに、DNAメチル化に着目した解析を行い、腫瘍細胞におけるエピゲノム変化を解析する。hiPSCs TP53-/-, INI-1-/-細胞、神経分化誘導後細胞、細胞脳内移植で発生した腫瘍のDNAメチル化状態を解析し、腫瘍形成に伴うエピゲノムプロファイリングを決定し、その他の遺伝子との関与について解析する。lentiviral CRISPR/Cas9による網羅的な遺伝子阻害スクリーニングで同定した分子に対する新規治療開発の可能性を検討する。本研究成果に基づいて、臨床応用を目指したAT/RTに対する新規治療開発研究へと推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19で研究活動が制約されたため
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