研究課題
我々はこれまで独自に神経堤由来である頭蓋骨から間葉系幹細胞を樹立し、その細胞特性や神経保護効果について報告してきた。脳梗塞モデルに対する頭蓋骨由来間葉系幹細胞の移植効果について報告しており、今後は他の疾患モデルへの応用が期待される。今回脊髄損傷モデルラットに対する、頭蓋骨由来間葉系幹細胞の移植効果について検討した。脊髄損傷モデルラットを作成し、ラット頭蓋骨由来間葉系幹細胞(rcMSCs)およびラット四肢骨由来間葉系幹細胞(rbMSCs)を、脊髄損傷1日後に尾静脈より投与行った。移植効果判定には運動機能評価とともに電気生理学的評価としてMoter evoked potential(MEP)を用い評価した。また、移植細胞の特性をreal-time RT-PCR法を用いて解析した。他覚的な運動障害の評価が必要であり、今回新たに経頭蓋電気刺激を用いて評価を行うこととした。本年度は、経頭蓋電気刺激での運動誘発電位を安定して記録するためのモデルラットも作成した。種々の脳、脊髄損傷モデルを作成し、上記MEP測定方法を用いて、rcMSCs移植効果を客観的に評価を行う実験を継続している。
2: おおむね順調に進展している
脊髄損傷後の運動障害を定量的に評価するため、ラットを用いて経頭蓋刺激運動誘発電位(MEP)を経時的(一ヶ月)に測定した。従来、マウスでは報告があったものの、我々が移植実験に用いているラットでは長期間にわたる安定したMEP記録を行った報告はなかった。このため、新たなモデルラットを作成し、MEPを長期間持続的に測定した。安定して測定できる結果を得たため、現在論文投稿中。rbMSCsと比較し、rcMSCs投与群はBBB scoreとInclined plate testでともに移植後4日目以降有意に運動機能が回復しており、MEPにおいても後肢筋により大きな振幅の回復が認められた。遺伝子解析では、rbMSCsと比較しrcMSCsにおいて神経堤マーカーおよび神経栄養因子マーカーの発現が有意に高かった。
確立したモデルラットを用いて、脳損傷後のラットでもMEP測定できるかどうか検討行っている。脳挫傷モデルを用いて、持続的なMEP測定を行う。モデルラット作成論文、ラット頭蓋骨由来間葉系幹細胞の脊髄損傷への移植効果論文を完成させる。
すべて 2021
すべて 学会発表 (2件)