研究課題/領域番号 |
19K09510
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
東 洋一郎 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (80380062)
|
研究分担者 |
上羽 哲也 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00314203)
清水 孝洋 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 准教授 (00363276)
八幡 俊男 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (40380323)
齊藤 源顕 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (60273893)
清水 翔吾 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (90721853)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 脳卒中 / キレータブル亜鉛 / ミクログリア / アストロサイト |
研究実績の概要 |
[具体的な内容] 本年度の研究により、1. リポ多糖刺激によりM1極性誘導した初代培養ミクログリアがアストロサイトの食作用に及ぼす効果を調べるため、初代培養アストロサイトにM1ミクログリアの培養上清を処置した。その後、蛍光ビーズを用いて食作用を検討したところ、低~中濃度のリポ多糖により極性誘導されたM1ミクログリアはリポ多糖の濃度依存的にアストロサイトの食作用を増加させたが、高濃度のリポ多糖刺激は食作用に効果を示さなかった。2. 1.の食作用誘導が亜鉛によって抑制されるか否かを検討するため、亜鉛前処置したM1ミクログリアを用いて1.と同様の検討を行ったところ、亜鉛前処置はM1ミクログリアによるアストロサイトの食作用誘導を抑制した。 3. 2.の結果はミクログリアの亜鉛取り込みが関与しているか否かを調べるため、予め細胞膜透過性亜鉛キレート薬を処置したミクログリアを用いて2.と同様の検討を行った。その結果、2.で観察された亜鉛前処置によるアストロサイトの食作用抑制効果が細胞膜透過性亜鉛キレート薬で阻止された。 [意義・重要性] 脳卒中後の認知症や気分障害は早急な対応が必要である。このような後遺症の発症機序にミクログリアとアストロサイトなどグリア細胞の関与が指摘されているが十分に理解されていない。今回の検討結果は代表者らがミクログリア活性化調節因子として見出した脳内キレータブル亜鉛がM1ミクログリアを介してアストロサイトの脳修復機能の一つである食作用を抑制し、その機序にミクログリアによる亜鉛取り込みが関与していることを示している。これらの結果は、未だ存在しないグリア細胞間の機能制御機構を標的とした脳卒中後遺症の予防法・治療法の開発に繋がる意義深い重要な知見である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、細胞外キレータブル亜鉛がM1ミクログリアを介してアストロサイトの食作用を抑制し、その機序にミクログリアの亜鉛取り込みが関与していることを明らかにした。当初予定していた神経保護・脳修復抑制関連分子の探索は次年度以降にしてアストロサイトの食作用に対する亜鉛誘導性増悪化M1ミクログリアの効果の解析に焦点を絞り、重要な知見を得ることが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、細胞外キレータブル亜鉛がM1ミクログリアを介してアストロサイトの食作用を抑制し、その機序にミクログリアの亜鉛取り込みが関与していることを明らかにした。しかし、脳内キレータブル亜鉛は生理的な脳機能に重要であり、これを治療標的とすることは困難である。そこで、今後はミクログリア内の治療標的となり得る分子の同定を行うことを計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
[理由] 本年度は、細胞外キレータブル亜鉛がM1ミクログリアを介してアストロサイトの食作用に影響を及ぼすか否かとその機序解明に焦点を絞って検討を行った。そのため、当初予定していたマイクロアレイを用いた神経保護・脳修復抑制関連分子の探索を次年度以降の検討としたことで、関連試薬を購入する必要がなくなり当該助成金が生じた。 [使用計画] 当該助成金は、次年度以降に予定しているマイクロアレイを用いた検討に使用する計画である。
|