研究実績の概要 |
基底膜を構成する細胞外マトリックス(ECM)蛋白perlecanに着目し、perlecan knockout (KO)マウスを用いて脳梗塞モデルにおける組織修復過程を検討した。結果、perlecan KOマウスでは脳梗塞のサイズおよび血液脳関門(Blood-brain barrier: BBB)の破綻の増悪がみられた。脳梗塞後には梗塞巣周囲にペリサイトが遊走・集蔟するが、perlecan KOマウスでは抑制され、組織修復におけるペリサイト活性化にperlecanが関わっていることが示唆された。機序を検討したところ、perlecanのC末端側フラグメントであるdomain V (DV)が、ペリサイトに接着しBBBの維持に関わっていること、さらにインテグリンα5β1を介してPDGF-BB依存性の細胞遊走を促進することを明らかとした。さらに、脳梗塞後にperlecan DVを投与すると投与蛋白は梗塞巣に蓄積し、梗塞サイズの縮小やペリサイト活性化がもたらされる可能性が示唆された(Nakamura, J Cell Biol 2019)。 一方で、我々は脳梗塞組織修復過程においてペリサイトによるアストロサイトの活性化、オリゴデンドロサイト前駆細胞(oligodendrocyte precursor cell: OPC)分化による再髄鞘化が重要であること(Shibahara, eNeuro 2020)、ペリサイトとの相互作用により、マクロファージによるミエリンデブリスの貪食が促進され、組織修復が促進されることを見出した(Shibahara, Stroke 2020)。さらに、これら一連の細胞間相互作用には、それぞれ異なるECM蛋白が関与している可能性が示唆され、現在論文投稿中である(Shibahara, in submission)。
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