研究課題/領域番号 |
19K09512
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大吉 達樹 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (80315407)
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研究分担者 |
栗原 崇 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (60282745)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | FFAR1 / コカイン / 依存 / うつ病 / セロトニン / in vivoマイクロダイアリシス法 / 疼痛 |
研究実績の概要 |
これまでの検討結果から、FFAR1は脳内モノアミンの中でも主にセロトニン遊離を調節することで、情動行動制御に関与することが示唆された。本年度は、① FFAR1遺伝子欠損マウスを用い、依存性薬物コカインによる移所運動活性亢進効果のさらなる検討を行い、② 正常野生型およびFFAR1遺伝子欠損マウス線条体におけるセロトニントランスポーター等、モノアミン関連タンパク質の発現レベルをウエスタンブロット法で比較した。 ① FFAR1遺伝子欠損マウスを用いたコカイン誘発移所運動活性亢進効果の再検討 コカインを野生型マウス (雄性C57BL/6J) に単回投与 (20 mg/kg、腹腔内投与) すると、移所運動活性を急速に亢進させるが、FFAR1遺伝子欠損マウスにおいては、この効果が有意に減弱することはすでに判明していた。この効果はオープンフィールド (50 cm×50 cm) にマウスを60分間馴化させてから行った結果であるが、馴化時間をさらに30分間延長すると、野生型では同様のコカイン誘発移所運動活性亢進効果が認められたが、FFAR1欠損マウスにおいてはほとんど効果が認められなくなった。 ② 線条体領域におけるモノアミン関連タンパク質の発現動態 正常野生型およびFFAR1欠損マウス線条体領域におけるセロトニントランスポーターおよびドパミントランスポーター、ドパミンD1およびD2受容体発現レベルをタンパク質レベル (ウエスタンブロット法) で比較したが、いずれの分子に関しても有意な変化は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FFAR1の機能推定に当たり、野生型およびFFAR1欠損マウスを用いてコカイン投与による移所運動活性亢進応答を一つの解析対象にしているが、環境条件を整備することにより、より明確な差異 (すなわちFFAR1の機能的重要性) を観察することを可能にした。また、FFAR1機能解析に有用な各種抗体を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、コカイン誘発移所運動活性亢進効果以外の行動薬理学的指標 (条件付け場所嗜好性試験など) について検討を重ね、コカインの薬理作用におけるFFAR1の機能的関与について検討しているが、モルヒネなど他の依存性薬物に対する行動学的変化との関係についても引き続き検討を行う。 また、現在行っている線条体in vivo マイクロダイアリシスはモノアミンおよびその代謝産物 (計7種類) を約30分間かけてHPLC分析するものであるが、ドパミン、セロトニン、ノルアドレナリンのみを高時間分解能 (約5~10分間間隔) でHPLC分析することで、これら3種のモノアミンの遊離動態を解析し、コカイン、モルヒネ、FFAR1作動薬 (GW9508) および拮抗薬 (GW1100) の効果を検討する。さらに、同様のin vivo マイクロダイアリシスを前頭前野や扁桃体など、依存形成や情動機能に重要と考えられている他の脳領域でも検討することを計画している。
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