研究課題
嗅神経再生を、嗅神経切断モデルを作成し、M2誘導ミクログリアにより促進を図る研究である。(1)使用動物:神経再生に関わるLOTUS分子を高発現したLOTUS transgenic ratが高齢化による継代不能となり受精卵から再度起こすのは考えず、通常マウスから始めた。C57BL/6JおよびICRマウス8週齢オスを使用した。(2)嗅覚評価法:BioResearch Center社の嗅覚刺激装置は購入・使用せず、buried food test(BFT)を用いた(Yang and Crawley, Curr. Protoc. Neurosci. 2009)。またナラマイシンテスト(飲水中に不味い刺激を混入と正常での差別)も併用。(3)嗅覚障害モデル:吸入麻酔下にマウス正中切開、骨drillingし嗅球を露出。吸引で両側嗅球を除去・破壊モデルを作成。当初は出血量が多く死亡したが、安定した作成を得た。BFT評価では、嗅球をメスで切開しただけでは部分的な嗅覚障害のため数週で自然回復したが、吸引モデルでは8週経過時点でも900秒(max)と障害が永続した。またマウス側頭下窩を開頭し、中大脳動脈前方でLOT(lateral olfactory tract)を同定し、両側切断モデル作成を試みた。作成できれば嗅覚障害の程度を調整でき、また吻合法にも幅が広がると考えられるが、両側には時間がかかり出血量で致死性となったため、副次的と考えている。(5)固定および免疫染色:灌流固定し、NeuNで嗅神経染色は行えている。BrdUは腹腔注入2日後に断頭し、olfactory bulbに集積していることは正常マウスで確認している。(6)DuraGen挿入群:ウシコラーゲンで臨床応用されていDuraGenを嗅球吸引部に充填、ミクログリア抜きで嗅覚再生されるかの群とした。個数を増やして断頭予定である。
3: やや遅れている
COVID環境下でやや制限があったのと、嗅神経障害モデルの安定した作成に時間がかかったためである。状況が整いつつあり、下記今後の方針で巻き返していきたい。学会発表に関しては、COVID下でBrain 2021が延期になるなど今年度の海外学会発表機会はなかった。2021年の脳神経外科総会(山梨大学 パシフィコ横浜)での発表や、延期されたBrain 2021(2022年予定)での発表を検討している。
①研究最終年度として、まずはBrdUの染色法の確立を急いでいる。脳室周囲(SVZ)からLOTを通り、嗅球(OB)への染色が確認できたら、切断モデルでそのBrdUの取り込みから前駆細胞の輸送が確認できる。その時点で1) 両側OB吸引群、2) 1)にDuraGen(吸収性人工硬膜:ウシ由来collagen)充填群、3) 2)にIL-4をしみ込ませmicrogliaの極性をM2に誘導したもの、の3群での比較を行う。具体的には嗅覚回復のBFT実験、ナラマイシンテスト、蛍光でのNeuNおよびBrdUでの染色から構造的な神経再生の有無を確認する。②時間に余裕があれば、in vitroモデルでも検討する。嗅神経の培養モデルを作成し、これとミクログリアの共培養モデルを作成。M1誘導ミクログリア(OGD: oxygen glucose deprivation)とM2誘導(IL-4添加)で、嗅神経への変化を比較していく。
上記モデル作成の遅れのために、本実験として行う前に、まずは手技の確立を目指しました。そのために動物数が少なくなり、実験費用などが次年度繰り越しとなっております。次年度(最終年度)計画のように、nを増やして有意差をみていく予定です。どうぞよろしくお願いいたします。
すべて 2020
すべて 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)