研究課題
高齢者中枢神経系原発悪性リンパ腫 (ePCNSL) は極めて予後不良な悪性脳腫瘍であり、標準治療として行われる大量メトトレキサート(HD-MTX)基盤化学療法と全脳照射では遅発性神経障害を高率にきたす。そのため新たな治療法の開発が必要である。我々はePCNSLに対し導入免疫化学療法後、完全奏効(CR)例には維持化学療法を行い照射は回避する治療戦略をとっている。すなわちePCNSL例に対し、導入免疫化学療法として、RituximabとHD-MTX(R-MTX療法)あるいはHD-MTXを基盤としたR-MPVレジメン(リツキシマブ、プロカルバジン、ビンクリスチン)による寛解導入を2週毎に6サイクル投与後、奏効例には1ヵ月毎にRMTXあるいはR-MPVによる地固め療法を2サイクル行い、CR例にはHD-MTXあるいは(R)MPVを維持療法として2-3ヵ月毎に2年間を目標に投与するものである。導入及び地固め療法で部分奏効(PR)例には定位照射、temozolomideを、増悪(PD)例は全脳照射あるいはBTK阻害剤投与を行なってきた。本年はR-MPVによる寛解、地固め、維持療法を施行した12例の治療成績をまとめた。完全奏効割合は92%、部分奏効割合は8%、生存期間中央値は未到達、2年生存率は67.3%、無増悪生存期間中央値は21.0カ月 2年無増悪生存率は38.4%であった。また、PCNSL患者髄液より微量DNAを抽出し、デジタルPCR法によりMyD88の遺伝子変異(L265P)が検出できるかを試みた。腫瘍組織と髄液の検体がペアで存在する13症例中、腫瘍組織でMyD88の遺伝子変異(L265P)が検出された9例(69%)では髄液でもMyD88の遺伝子変異が検出可能であった。
2: おおむね順調に進展している
本年度はMyD88の遺伝子変異(L265P)についてデジタルPCRで検出する系を確立し髄液中の微量DNAの変異発現を検出可能にする予定であったが、計画通りデジタルPCRの系が確立でき、PCNSLの腫瘍組織と患者髄液の微量DNAよりMyD88の遺伝子変異(L265P)の検出が可能であることが確認できた。またPCNSL患者血液中のマイクロRNAを抽出を終了し、現在網羅的に解析中である。
PCNSL患者血液中のマイクロRNAの解析を進める。またCD79Bの遺伝子変異についてデジタルPCRで検出する系を確立し、髄液の微量DNAからCD79B遺伝子変異の検出が可能かについて検討する予定である。またPCNSL患者髄液の質量分析を用いたメタボローム解析を行い、診断、治療、再発、予後に関係する新たなバイオマーカーを探索する予定である。
コロナ感染禍において学会がweb開催となったため出張経費の支出が必要でなくなったため、残金が生じた。研究試薬の購入、論文投稿のための費用として計上予定である。
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