研究課題
高齢者中枢神経系原発悪性リンパ腫 (ePCNSL) は極めて予後不良な悪性脳腫瘍であり、若年者に対して標準治療として行われる大量メトトレキサート(HD-MTX)基盤化学療法と全脳照射では遅発性神経障害を高率にきたす。そのため新たな治療法の開発が必要である。我々はePCNSLに対し導入免疫化学療法後、完全奏効(CR)例には維持化学療法を行い照射は回避する治療戦略をとっている。ePCNSLに対し寛解導入療法としてHD-MTXを基盤としたR-MPVレジメン(リツキシマブ、メトトレキサート、プロカルバジン、ビンクリスチン)を2週毎に6サイクル施行後、奏効例には1ヵ月毎にR-MPVによる地固め療法を2サイクル施行、CR例にはMPVによる維持療法を2-3ヵ月毎に2年間を目標に施行、部分奏効(PR)例には減量照射23.4Gyを施行した。全17例の年齢中央値は72歳(65-79)、KPS中央値は70で、寛解導入療法に対するCR割合は76.5%、PR割合は23.5%、無増悪生存期間中央値(mPFS)は51カ月、2年PFSは53.8%、生存期間中央値(mOS)は未到達、2年OSは72.8%であった。維持療法を行った(M+)7例と行わなかった(M-)6例のmPFSは、M+:51ヵ月 vs. M-:18.3ヵ月(P=0.2)、mOSはM+:未到達 vs. M - : 21ヵ月(P=0.038)で、維持療法を行うことで生存期間が有意に延長した。また、PCNSL患者髄液より微量DNAを抽出し、デジタルPCR法にてMyD88の遺伝子変異(L265P)が検出できるかを試みた。PCNSL患者20例中12例(69%)でMyD88の遺伝子変異(L265P)が検出可能であり、全例で腫瘍組織のMyD88遺伝子変異新が確認された。髄液の微量DNAのMyD88遺伝子変異はPCNSLの診断マーカになる可能性が示された。
3: やや遅れている
新型コロナ感染症拡大のために、研究施設の使用制限などがあり、PCNSL患者髄液中の微量DNAを用いてデジタルPCRの手法によりCD79Bの遺伝子変異を検出する系の確立が遅れている。
CD79Bの遺伝子変異についてデジタルPCRの系を確立し、PCNSL患者髄液の微量DNAよりCD79Bの遺伝子変異の検出が可能かについて検討する予定である。またPCNSL患者髄液のメタボローム解析を行い、バイオマーカーを検索する予定である。
新型コロナ感染症拡大のために、学会がweb開催となり旅費支出が必要でなくなったため、残金が生じた。また新型コロナ感染症拡大のために研究施設が使用できず、PCNSL患者髄液中の微量DNAを用いてデジタルPCRの手法によりCD79Bの遺伝子変異を検出する系の確立が遅れている。実験助手の実験補助業務に対する人件費、実験試薬購入、論文投稿のための費用として計上し、使用する予定である。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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