研究課題/領域番号 |
19K09514
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
三島 一彦 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (00282640)
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研究分担者 |
落谷 孝広 東京医科大学, 医学部, 特任教授 (60192530)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | primary CNS lymphoma / chemotherapy / MyD88 / biomarker / メタボローム解析 |
研究実績の概要 |
中枢神経系原発悪性リンパ腫 (PCNSL) は予後不良な悪性脳腫瘍で、高齢者に標準治療の大量メトトレキサート(HD-MTX)基盤化学療法と全脳照射を行うと遅発性神経障害を高率にきたすため、新たな治療法の開発が必要である。我々は66歳以上のPCNSLに対し、寛解導入療法としてR-MPVレジメンを6サイクル施行後、奏効例は1ヵ月毎にR-MPVによる地固め療法を2サイクル施行し、CR例にはMPVによる維持療法を2ヵ月毎に2年間施行するプロトコールにて高齢患者では全脳照射を回避した治療戦略をとっている。全43例の年齢中央値は73歳、KPS中央値60、MMSEは20以下が58%を占めた。寛解導入療法後のCR割合77%、PR割合15.4%、CRを得るのに要したR-MPVサイクル中央値は4サイクルであった。mPFS: 24.3カ月、2年PFS割合: 50.5%、mOS: 56.9カ月、3年OS割合: 72.3%であった。治療経過中のKPSは寛解導入療法期に有意な改善を認めた。またKPSにおいても寛解導入療法期に有意な改善を認め、これらは維持療法期間中維持された。予後不良の高齢PCNSL においてR-MPV療法による寛解導入維持化学療法はKPS, MMSEを改善し、これを維持した状態で予後の延長できる可能性がある。またPCNSL患者髄液より微量DNAを抽出し、デジタルPCR法にてMyD88の遺伝子変異(L265P)が検出できるかを試みた。PCNSL患者 20例中12例(69%)でMyD88の遺伝子変異が検出可能で、全例で腫瘍組織のMyD88遺伝子変異新が確認された。現在PCNSLの髄液及び腫瘍組織の質量分析を用いたメタボローム解析や代謝物をつくる酵素活性の解析により腫瘍細胞の脂質や解糖系代謝機構やその異常をターゲットとした新規治療法の開発を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナ感染症のために、研究施設の使用制限などがあり、PCNSL患者髄液中の微量DNAを用いてデジタルPCRの手法による、CD79Bの遺伝子変異 、CARD11 遺伝子、TERTプロモーター遺伝子変異などを検出する系の確立が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
CD79B、CARD11などの遺伝子変異についてデジタルPCRの系を確立し、PCNSL患者髄液の微量DNAよりCD79Bの遺伝子変異の検出が可能かについて検討する予定である。またPCNSL 患者髄液を用いたメタボローム解析、酵素活性解析を行い、予後や再発に関わるバイオマーカーを検索する予定である。
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