研究実績の概要 |
モデルマウスから脳毛細血管内皮細胞を単離し、EBIを生じた内皮細胞に特化したSAH後の遺伝子発現変化を明らかにするとともにその遺伝子発現変化に関与する末梢血液中にて検出可能なマイクロRNAを同定する目的で研究を行った。頭蓋内圧亢進の程度を調整することで重症と軽症のくも膜下出血モデルマウス(自己血注入前方循環モデル)をそれぞれ作成、コントロール群も加え、脳組織から脳毛細血管内皮細胞を単離し、その遺伝子発現をマイクロアレイ解析を行い測定した。遺伝子の発現量がくも膜下出血の重症度に相関して低下する遺伝子を10個同定した。最も各群間での発現量に差異が顕著であった遺伝子はSerpinb2でその発現量(log2)は4.71(重症群)<7.49(軽症群)<10.43(コントロール群)となっていた。自験データであるくも膜下出血患者の末梢血中においてコントロール群としての未破裂脳動脈瘤患者の末梢血中と比べて高発現しているマイクロRNAのうち絶対的発現量の多い10個のマイクロRNAに関してこれらのマイクロRNAが標的とする遺伝子を公開されたWeb上のデータベースであるTarget scanを用いてin silicoで解析し、くも膜下出血後の遺伝子発現変化に関与する末梢血液中にて検出可能なマイクロRNAの同定を行った。患者血清の解析から同定されたマイクロRNA(hsa-miR-619-5p)は内皮細胞の遺伝子発現解析で同定された10個の遺伝子のうちの3つの遺伝子(Soat1, Gpx8, Rgs16)を標的としていた。また6つのマイクロRNA(hsa-miR-3619-3p, hsa-miR-1273f, hsa-miR-5585-3p, hsa-miR-5096, hsa-miR-1285-3p, hsa-miR-550a-5p)がそれぞれ2つの内皮細胞で発現変化のある遺伝子を標的としていた。
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