研究実績の概要 |
目的:①IDH遺伝子変異型星細胞腫の悪性転化の基盤となる代謝産物、②必要な摘出度が異なる星細胞腫と乏突起膠腫の鑑別に有用な代謝産物を探索した。方法:IDH変異腫瘍の凍結検体43例を対象にイオントラップ型質量分析計によるメタボローム解析をおこない、スペクトルデータからマーカー候補分子の探索を直交部分最小二乗法・判別分析をおこなった。ピークについてデータベースから候補化合物の情報を得て、細胞の増殖などに関与しうる低分子化合物に絞り込んだ。結果:①②の候補としてUric acid、Hypoxanthine(XH)/ Inosine (INO)/ Cystine(Cys)を候補としてそれぞれ挙げた。マーカー候補分子の同定、MS/MS条件の検討、凍結検体での定量分析をおこなった。これらの定量値からROC解析をおこない、26検体を加えてValidationをおこなった。①:悪性度の高い膠芽腫とそれ以外の星細胞腫の鑑別においてAUC 0,79 (validation: 0.75)、②: XH, INO, CysでAUC 0.85 (0.74), 0.88 (0.73), 0.81 (0.74)であった。さらに①:IDH変異型腫瘍全体ではUric acid 130 ng/mlをカットオフとすると再発しやすい腫瘍の予測が可能であった。②:HX 1125 ng/ml以下、INO 1910 ng/ml以下、Cys 30 ng/ml以下の場合、星細胞腫である陽性的中率は100 %、78 %、83%、HX 2620 ng/ml以上、INO 3505 ng/ml以上、Cys 190 ng/ml以上で乏突起細胞腫である陽性的中率は69 %、81 %、85%であった。感度が50 %以下と低いが、一部の症例では代謝産物の測定が術中の悪性度評価、乏突起膠腫と星細胞腫の鑑別に有用であると考えられた。
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