研究実績の概要 |
研究計画では年2名程度の新患髄芽腫(MB)のMRSをLCModelで解析する想定であるが、昨年度新患4名に加え、本年度は3名のMB新患(6歳女、12歳男、35歳女)と、MBと鑑別が必要な小脳毛様性星細胞腫1名(8歳男)のMRS解析を行った. 昨年度の新患MB 4例中2例で脊髄播種が認められたが、本年度MB 3例では認められなかった。 MBの特徴的MRS所見として、N-acetylaspartate (NAA) の著明な低下、lactate (Lac) と lipid (Lip), macromolecule (MM)の増加、taurine (Tau) の出現が知られている(Panigrahy A, et al. AjNR 27:560-572,2006)。昨年の新患MB 4例の解析ではNAA の著明な低下、Lac, Lip+MM の増加、Tau検出が確認され、myo-inosytol (Ins)/Crの上昇が見られた。コントロールとの対比でglutamine (Gln)/creatine (Cr) 上昇、glutamate (Glu)/Cr上昇がMBの特徴的所見と考えられたが、これらの所見は本年度のMB 3例全例で認められた。2-hydroxyglutarate (2HG) は本年度のMB 3例全例でも僅かに検出された。 脳幹神経膠腫・小脳毛様性星細胞腫ではTauは検出されないが、NAAの低下、Lac, Lip+MM の増加、Ins/Cr 上昇、Glu/Cr上昇が認められ、2HG は検出されなかった。 以上より、MBのMRSの特徴としてTauの検出、Gln/Cr上昇と2HGの検出が示唆され、鑑別にも有用と考えられる. なお MRS 解析を行った新患MB患者7例の経過(最長2年)では再発例は認めていない。次年度以降も新患の髄芽腫を中心にMRS解析を行う予定である。
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