研究課題/領域番号 |
19K09523
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
鮫島 哲朗 浜松医科大学, 医学部, 講師 (00295213)
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研究分担者 |
小泉 慎一郎 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (10456577)
難波 宏樹 浜松医科大学, 医学部, 教授 (60198405)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自殺遺伝子療法 / 歯髄幹細胞 / bystander effect |
研究実績の概要 |
単純ヘルペスチミジンキナーゼ(HSVtk)発現幹細胞としてMuse-tk細胞の使用を計画していたが、Muse細胞に遺伝子組み換えを加えて使用することが現時点において困難となり、幹細胞源の変更を要した。これまで当研究室では様々な幹細胞について検討を行ってきたが、新たに歯髄幹細胞を用いて本研究を進めることとした。提供いただいている歯髄幹細胞はすでに再生医療の分野で臨床使用が可能な製剤化のプロセスが確立しており、今後本研究を臨床応用する際に利点となる。これまでのところin vitroの実験として、複数の腫瘍細胞株のconditional mediumに対する遊走能をMatrigel invasion chamberを用いて評価し、歯髄幹細胞の腫瘍因子に対する十分な腫瘍集積能を証明した。今後行うin vivo実験では治療幹細胞の投与は静注で行う計画であり腫瘍集積能は本研究の重要なfactorである。in vivo腫瘍集積能を確認するため、以前から当研究室で行っている腫瘍移植脳と対側の脳内に歯髄幹細胞を移植し、移植した歯髄幹細胞が対側の腫瘍移植部位に遊走するかを確認する実験をすでに行っており、脳梁を介した歯髄幹細胞の腫瘍移植部位への移動を確認した。 本研究の遂行のためHSVTK発現歯髄幹細胞株を作成する必要があり、現在までにHSVtk遺伝子導入レンチウイルスベクターの作成を行った。HSVtk発現歯髄幹細胞株が作成できたところでin vitroバイスタンダー効果の評価を行い、またin vivo実験として腫瘍形成抑制実験、既存腫瘍の腫瘍縮小効果を確認する治療実験を行い期限内の実験終了を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回新たにHSVtk発現歯髄幹細胞株の作成に着手したが、現在までにHSVtk発現歯髄幹細胞株は作成できていない。初期は臨床応用を考え非ウイルス的遺伝子導入を用いた遺伝子導入法、つまりPiggyBac transposaseとHSVtk-IRES-GFPをco-transfectionしてHSVtk遺伝子の導入を試みたが、導入効率が不良であり治療細胞として樹立をすることができなかった。次に、レトロウイルスを用いてHSVtk遺伝子の導入を試みた。Retrovirus producing cell lineであるPA317のconditioned mediumからレトロウイルスを採取し、歯髄幹細胞に感染させHSVtk遺伝子の導入を行った。導入された遺伝子はG418でpositive selectionを行って治療細胞としたが、ganciclovirへの感受性が低い細胞であったため、レトロウイルスにより導入された遺伝子がsilencingを受けていると考え、他の手法を用いることとした。そこでsilencingを受けにくいレンチウイルスでのHSVtk遺伝子の導入を行う方針とした。HSVtk-IRES-GFPをレンチウイルスベクターに組み替えて大腸菌にtransformationしてレンチウイルスベクターを増幅させ293T細胞にtransfectionしてレンチウイルスの作成を行った。現在本ベクターにて遺伝子導入実験、細胞株の選定を行っているところであり、進捗状況としてはやや遅れているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、HSVtk遺伝子発現歯髄幹細胞株の作成を行うと共に、当初の計画通り、2年目以降に実施する計画であった実験を並行して進める。本年はin vivo実験並びに正常組織に対する安全性の検証を行っていく。肺腺癌細胞株に対するin vitro、in vivoバイスタンダー効果並びに遊走能の検証を行い、実験の再現性の確認と共に、実臨床反応を反映した結果を得る計画となっている。つまり、GCV投与のタイミング、投与量、投与期間を変えることにより効果の差異を検討しプロトコールの作成を目指す。さらに、正常脳に対する本治療の毒性の検証をアポトーシスに着目し、in vitro・in vivo real-time画像解析と組織学的検討を行う。HSVtk/GCVシステムはDNAポリメラーゼ阻害によるアポトーシスによる殺細胞効果を用いた治療法であり、原理的には分裂細胞のみにアポトーシスが起こるため正常組織を傷害しないと考えられるが詳細な検討はされていない。そこでHSVtk発現歯髄幹細胞と市販の神経細胞、星状膠細胞、乏突起膠細胞を共培養し、ホスファチジルセリンに強い結合親和性をもつアネキシンA-5を蛍光色素標識した試薬を用いて、タイムラプスイメージングにて細胞レベルのアポトーシスの検出を行う。またin vivoの毒性の検証のため蛍光色素標識したHSVtk発現歯髄幹細胞を脳内移植し、GCV投与中のアポトーシスをアネキシンA-5投与後に二光子励起顕微鏡でリアルタイムに細胞レベルでの観察を行う。また、各タイミングで切片を作成し、時系列に沿った組織学的検討を行っていく。
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