研究課題/領域番号 |
19K09531
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
松永 裕希 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (80772136)
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研究分担者 |
中川 慎介 福岡大学, 薬学部, 助教 (10404211)
諸藤 陽一 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター), 脳神経外科, 医長 (40437869)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 血液脳関門 / Rho kinase阻害薬 / in vitroモデル |
研究実績の概要 |
血液脳関門(blood-brain barrier: BBB)は脳の恒常性保持に重要な役割を果たしている一方、薬剤開発の観点からは、BBBが脳への治療薬剤の通過を阻むこととなり、中枢神経疾患治療薬開発の大きな障壁となっている。本研究ではBBB構成細胞を組み合わせた複数の共培養in vitro BBBモデルとRho kinase阻害薬(fasudil)を用いてBBBに与える影響及びその作用機序の解明を行う。 現在脳梗塞急性期の治療は、抗血栓薬が中心となるがその有効性の反面、出血性梗塞への移行という危険もはらんでいる。脳虚血、再灌流による組織障害のため血管透過性が増し、血栓形成の場である血管内皮の状態が大きく影響する。Rho-kinase阻害薬であるFasudilは、現在くも膜下出血後の脳血管攣縮に対する治療薬としてすでに臨床の場で広く使用され、安全性も確立している。Rho kinaseは細胞運動・遊走・増殖・接着、遺伝子発現誘導など多面的に細胞の重要な生理機能を制御しており、Fasudilの広範囲な薬効プロファイルに着目した研究を展開している。これまでの研究でIn vitro BBBモデル作成について安定したモデル作成を行うことが可能となった。共培養モデルを用い、FasudilがTransendothelial electrical resistance上昇、透過性低下をもたらしBBB機能強化を進めることやTight junction蛋白の発現増強することを見出した。またモデルの構成細胞を変化させることでBBB機能に変化が見られることを発見した。この実験結果を論文掲載へ向けて追加実験、論文執筆を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
In vitro2次元血液脳関門モデルは特段問題なく作成可能である。また本研究の主題でもあるRho kinase阻害薬Fasudilが脳血液関門に対してTight junction機能を強化することについてもIn vitro modelを用いた検討で立証できた。また病態モデルを用いて虚血再灌流障害に対してRho kinase阻害薬が保護的作用を示すことを確認した。またその保護作用にペリサイトやアストロサイトが関与している可能性が示唆されている。コロナ禍による渡航規制のため共同関係にあるハンガリー生命科学研究所での共同実験が遂行できておらず追加実験が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
Rho kinase阻害薬が与える血液脳関門の影響については、現象として解明しつつある。今後については現象の作用機序・分子生物学的機序の解明を目的として得られた細胞を回収しての免疫生化学的検討、及び血管腔側・脳側の培養液を用いたサイトカインアッセイを行う予定である。また共同研究を行っているハンガリー生命科学研究所Deli M教授グループと協力しながら当研究グループでも灌流型in vitro BBB modelの作成方法を確立し、同モデルを用いたBBBに対するRho kinase阻害薬の作用機序解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルス感染症流行に伴い、国際学会での発表や共同研究先であるハンガリーへの渡航・共同実験が施行できなかった。次年度状況が許容されるのであれば、延期になった国際学会での旅費としても支出や海外での共同実験に必要となる試薬購入を予定している。
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