研究課題/領域番号 |
19K09535
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
白畑 充章 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (20534944)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | IDH変異型星細胞腫 / 予後因子 / 悪性転化 / CDKN2A/B欠失 / 腫瘍内不均一性 / ゲノムコピー数異常 |
研究実績の概要 |
MLPA法によるCDKN2A/Bコピー数異常の測定系を確立し、マイクロアレイでのゲノムコピー数異常に関するデータを取得済みのIDH変異型星細胞腫症例を対象として、MLPA(Multiplex ligation-dependent probe amplification)法を用いてCDKN2A/B遺伝子座におけるコピー数異常を測定した。プローブは神経膠腫用に設計された既存のプローブを用いた。 申請者はマイクロアレイでの解析に基づいてCDKN2A/B欠失はIDH変異型星細胞腫における強力な予後不良因子であることを報告したが、今回MLPA法による測定によっても予後との相関が確認された。他にRB1 欠失、CDK4増幅、CDK6増幅、CCND2増幅についての測定系の確立を進めている。また初発時と再発時でのペア検体の収集を進め、これら遺伝子座におけるコピー数異常の変化を解析し、IDH変異型星細胞腫の悪性転化の分子背景を明らかにするべく解析を進める。 神経膠腫ではMRIで腫瘍領域の一部に造影効果を認める症例があり、部分的に悪性度が高まっていることが示唆される所見として重要である。こうした症例について腫瘍内の複数部位で術中ナビゲーションを用いてMRI画像との対比のもと検体採取を行なった。神経膠腫における腫瘍内の部分的な悪性化という現象をMRIやメチオニンPETでの画像所見、病理所見、分子異常を統合して解析し、悪性化の背景にある分子異常を明らかにすることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CDKN2A遺伝子座においてp16を構成するExon2、Exon3、Exon4, p14を構成するExon1, Exon3、CDKN2B遺伝子座においてp15を構成するExon1,2について、コピー数異常を詳細に検討し、9p21領域のどのようなコピー数異常のパターンが悪性化に影響するのかを明らかにすることが本研究の重要な課題であるが、この点を詳細に検討するためのカスタムプローブの設計に試行錯誤があった。現在は既存のプローブに加えて今回設計したカスタムプローブで解決できる見込みとなっており解析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
IDH変異型星細胞腫60例でDNA抽出を終えた。また初発時と再発時のペア検体の収集、腫瘍内の複数箇所のサンプリングについて、MRI画像による造影効果の有無やメチオニンPETの集積の程度の違いといった画像との関連を含めて収集を進め、順次MLPA解析を進めていく。CDKN2Aにおいてp16を構成するExon2、Exon3、Exon4, p14を構成するExon1, Exon3、CDKN2Bにおいてp15を構成するExon1,2についてコピー数異常を詳細に検討し、特に予後不良のIDH変異型星細胞腫においてマイクロアレイでCDKN2A/B欠失が認められた症例では9p21の全体が欠失しているのか、部分欠失しているのか、部分欠失の場合どの領域の欠失があるのかを明らかにする。さらにRB1 HD、CDK4増幅、CDK6増幅、CCND2増幅についても同様にMLPA法で評価し、予後との相関について解析を行う。同一症例の初発時と再発時のペア検体において、MLPA法を用いて初発時と再発時検体でコピー数異常の変化を評価する。腫瘍内のコピー数異常の不均一性と画像データ、その後の臨床経過、画像変化について解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
DNA抽出についての試薬などこれまでの研究で残余分の試薬を用いることで節約が出来たこと、MLPA法に関しては使用実績がある研究室から試薬の供与が得られて測定の条件設定などにおいて試薬の購入の節約が出来た。またMPLA法の測定系のセッティングについてインストラクターの指導を受ける予定がコロナ禍で遅延があった。MLPA法の実験系の確立は行うことが出来たので、DNA抽出完了分の解析を進めるべくプローブを準備して解析を進めていく予定である。
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