研究課題
医療の質と安全性向上のため、手術のトレーニングをより効率的な形へと発展させることを目的とし、本研究では「脳血管内治療の手術トレーニングを行う医師の視線情報の解析」と「トレーニング手法をロバストかつ低価格で実現する視線計測装置の開発」に取り組んだ。それぞれの成果を以下に報告する。「脳血管内治療の手術トレーニングを行う医師の視線情報の解析」では、医療行為の妨げにならないように、かつ、安定した視線情報を取得するため計測環境の構築に努めた。構築した環境において、脳血管内治療の熟練医、訓練医の視線情報の取得に成功した。視線情報のデータは手術の工程ごとに抽出し、適切な解析方法の検討と解析環境の構築を行った。以上より、マイクロカテーテル誘導に関して訓練医の3名のうち2名はモニタに映し出される治療に必要な情報の切り替え頻度が低いことを確認した。次に、動脈瘤とマイクロカテーテルの注視時間の割合に関して、熟練医の方がマイクロカテーテル注視時間が長い傾向があることを確認した。さらに、カテーテル押し引きに関して、訓練医の視線が動脈瘤に集中しているのに対し、熟練医の視線は動脈瘤とマイクロカテーテルに分散していることを確認した。本解析では確率分布の違いを確認した状態であるため、この相違を定量的に評価するため顕著性マップとの相互相関をとり数値化することが課題と考えている。さらに、サッカード等を指標とした動的な解析を追加することも検討している。「トレーニング手法をロバストかつ低価格で実現する視線計測装置の開発」では、市販の3次元カメラを用い距離情報を有効利用することでロバストかつ低コスト化を達成するため撮影テストを実施した。しかし、想定する低コストの範囲内では視線情報を取得できるレベルの解像度の確保が未達で、距離情報を画像処理へ応用は困難であった。
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Nagoya Journal of Medical Science
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