研究実績の概要 |
肩関節の運動制御と安定化には、固有受容器からのフィードバック情報が不可欠である。肩関節脱臼により、解剖学的破綻や固有受容器の損傷が生じ、その後の繰り返す脱臼が引き起こされる。これまでの反復性肩関節前方脱臼(RSI)の中枢神経に関連する先行研究では、固有受容(proprioception)に関連する脳機能研究は行われていなかった。本研究では機能的MRI (fMRI)を用い、RSIにおけるproprioception低下に伴う中枢神経可塑性を明らかし、RSIの重症度と脳活動の相関も明らかにすることを目的とした。対象は健常者(N群)12 名、RSI(P群)13名で、3テスラMRIと頭部コイルを用いて肩関節自動運動(AM)および他動運動(PM)中にfMRI撮像を行い、解析はSPM8を用いた。3DCTの関節窩正面像を用いた骨欠損率(Itoiら)をRSIの重症度として脳活動との相関解析に使用した。proprioception関連の脳活動の低下は、RSI患者における受動的proprioceptionの低下を示唆した(P < 0.05 family-wise error, cluster level)。Proprioceptionのフィードバックによる右小脳活動は、重症度(関節窩骨欠損率)と有意に負の相関を示した(P = 0.001, r = -0.79)。fMRIでは,肩の筋肉の随意的な収縮時に中枢神経系で運動制御の異常が起こることが脳活動より示唆された(Shitara et al., 2022)。
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