研究課題/領域番号 |
19K09545
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
川口 善治 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (00262527)
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研究分担者 |
北島 勲 富山大学, 大学本部, 理事・副学長 (50214797)
箭原 康人 富山大学, 附属病院, 医員 (60456390)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 後縦靭帯骨化症 / 血清バイオマーカー / OS index / Sclerostin(SOST) / Dickkopf-1(DKK1) |
研究実績の概要 |
まず当科で加療あるいはフォローしている脊柱靭帯骨化症患者のうち後縦靭帯骨化症(OPLL)患者のリストを作成した。全体で2020年3月の段階で287名が登録されている。これらにはほぼ全症例で全脊椎のCTが撮像してあり、骨化巣レベルの分析も行っている、また採血が行われており、これが当施設で冷凍保存されている。これらを用いてOPLLのバイオマーカーを検討する研究を続けている。 本年度はSclerostin(SOST)およびDickkopf-1(DKK1)を測定した。SOSTおよびDKK1は、いずれも古典的Wntシグナル経路の阻害因子であり、骨形成に対して抑制的に働くことが知られている。近年抗sclerostin抗体は骨形成促進薬として広く使用されるようになった。従ってOPLL患者の血清SOSTおよびDKK1値を測定し、病態との関係性を求めることを目的とした。 全脊椎単純CT検査によりOPLLと診断された38人(男性18人、女性20人)、平均年齢63.1±13.8歳、および年齢と性別を一致させた変形性脊椎症患者41人(男性20人、女性21人)、平均年齢63.9±14.3歳を対象とした。またCTを用いて全脊椎のOPLLの広がりを罹患椎体および椎間板レベルで評価しOssification index(OS index)と定義した。上記の血清マーカーの値をOPLL群と対照群で比較し、かつOPLL群ではOS indexとの相関を検討した。その結果、血清SOST値はOPLL群で平均214pg/mLに対し、対照群では平均146pg/mLとOPLL群において有意に高値であった(P=0.002)。血清DKK1値はOPLL群と対照群において有意な差はなかった(P=0.19)。血清SOST値とOS indexの相関をみると、男性では両者が正の相関を示したのに対し(相関係数r=0.48, P=0.03)、女性では弱い正の相関(r=0.23, P=0.32)を示した。その一方で血清DKK1値とOS indexの間には男女とも弱い負の相関(男性:r=-0.30, P=0.20, 女性:r=-0.26, P=0.25)を示した。 これらの結果より血清SOST値はOPLLの病態を反映する血清マーカーとなる可能性がると結論した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まとまった臨床データが構築され資料が得られている。これらはここ10年以上にわたって申請者を中心に当施設で集められた貴重な資料である。今後はこのデータをさらに他に応用し後縦靭帯骨化症のメカニズムに迫ることができると考えている。 しかし、当初計画されていたペリオスチンについては、検体の測定は進捗しつつあるが、未だまとまった結果が得られていない。In vitroにおけるデータは進捗しつつある。一方、動物実験については準備段階である。 従って当初計画されていた①脊柱靭帯骨化症患者検体を用いた、血清ペリオスチンおよび骨化関連因子の比較、②骨化最前線における前駆細胞(Ossification initiating cell: OIC)の分離・培養、③OICに対するIL-23/IL-17/ペリオスチン経路の意義と作用、④脊柱靭帯骨化症モデルマウスに対する、ペリオスチン欠損、IL-17阻害の意義、このうち①、②はデータが得られつつあり。③は検討中、④については今年度以降計画を実施したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
①脊柱靭帯骨化症患者検体を用いた、血清ペリオスチンおよび骨化関連因子の比較、これについては検討結果を解析し、論文執筆を行う予定である。 ②骨化最前線における前駆細胞(Ossification initiating cell: OIC)の分離・培養本年度はin vitroのデータを確定し検討する。 ③OICに対するIL-23/IL-17/ペリオスチン経路の意義と作用 ②と同時に進捗することが可能であると考えている。 ④脊柱靭帯骨化症モデルマウスに対する、ペリオスチン欠損、IL-17阻害の意義、本年度より動物実験に着手したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に更なる実験の継続、および研究内容の発表のために必要となる。 実験に必要な試薬の購入、研究成果の発表に必要な経費である。
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