研究実績の概要 |
我々は慢性腰痛患者が腰痛に関する話題を聞くことで脳がどのように反応しているかに注目して研究を開始していた。慢性腰痛症例 20例を対象とし、腰痛のない20例を対照群とし研究を行った。f MRIで腰痛に関する質問(Pain Condition)、腰痛に関連しない質問(Neutral)を聞かせ、脳活動を測定した。脳活動は記憶・聴覚領域を中心に解析した。脳活動はβ値を用い、region of interest (ROI)解析を行った。β値はNeutral, Pain,β値のΔ値となる Pain-Neutral(P-N)Conditionの3条件で対照群と腰痛群で比較した。またビデオカメラで顔画像を計測し、RGBをもとに顔色変化の指数(RGBCC:0~1)を算出した。2022年度は解析を中心に研究した。【結果】対照群と腰痛群を比較すると左扁桃体のβ値は腰痛群が高い結果であり、RGBCCは有意差を認めなかった。各脳領域のβ値とRGBCCとの相関をみると,腰痛群はPain conditionでβ値が聴覚・言語領域である左右の上側頭回で高く、記憶領域である右海馬(P=0.02,r=0.51)において相関を認めた。健常者群は全領域で相関を認めなかった。【考察・結語】顔色の変化の比較では腰痛群と対照群では差がないが、腰痛群の顔色変化は言語領域や記憶領域と相関していることが判明した。腰痛患者は腰痛に関する言語刺激で脳がより賦活化されること、そして顔色の変化に表れることが示唆された。特定条件を満たす患者(今回は腰痛)に対して顔色の変化を解析することで脳の反応を疑似的に測定できる可能性が示唆される。研究の目的は脳反応をfMRI ではなく顔色など、身体情報として得られやすい情報から簡便に脳の動きを知ることができないかというものであったが、その手掛かりになる結果であったと考えている。
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